著者
永冨 大舗
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.15-23, 2018

<p>1歳半ぐらいの子どもは物には名前があるということが分かり、大人が物の名前を教える過程で語彙が急激に増加する語彙爆発という現象が起こる。しかし、ASD 児は主症状であるコミュニケーションの障害のため、質問への応答能力を獲得したとしても、自分から疑問詞を用いて尋ねるという疑問詞始発が起きないとされている。本研究は、疑問詞始発が見られないASD の男児とPARS によりASD の特性が強いとされる女児に対し、音声プロンプトを用いて、未知な刺激を提示された時に、自ら「これ何?」と尋ねる疑問詞始発の獲得のための介入を行った。教材として、対象児が知らないと予想されるイラストカードや漢字カードを用い、対象児が知っていると予想されるカードとランダムに提示することにより、疑問詞始発が必要な機会を設定した。介入期では、対象児の疑問詞始発が生起しない時、「これ何?」と音声プロンプトを行い、模倣した後にイラストの名前や漢字の読みを教えた。音声プロンプトは段階的にフェイドアウトした。その結果、対象児は音声プロンプトを用いた介入期が始まると疑問詞始発が生起し、介入を行っていない未知な情報を含む刺激に対しても疑問詞始発が生起するようになった。また、日常場面においても、疑問詞始発を用いる様子が見られるようになった。また、「どこ?」や「だれ?」といった指導をしていない疑問詞始発が生起するようになった。更に、2 ヶ月後のフォローアップ期においても介入の効果が維持された。</p>