著者
永冨 陽子
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 = Journal of Osaka University of Economics (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.243-248, 2016-01

本論文は,ハラスメント体験を端緒とするストレッサーの生起過程の因果モデルを構成し,その妥当性の検証を通してストレッサーの生起過程を明らかにすることを検討した。共分散構造分析の結果,ハラスメント体験をした労働者が,まず「職場の人間関係」のストレッサーを生起し,次に仕事の要求度が高くなり,仕事の裁量度が低くなる結果,高いストレス反応を引き起こすという因果モデルは生起順序の一つの答えであると言える。つまりストレッサーの生起過程において順序があるということは,各ストレッサー発生段階において,次のストレッサーを予見し対処することが可能であるということが示唆された。今後,具体的かつ有効な対処などをさらに検討することが必要である。
著者
永冨 陽子
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 = Journal of Osaka University of Economics (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.393-398, 2015-11

本論文は,職場におけるハラスメント体験の有無によって,労働者のストレス要因,ストレス反応,ソーシャルサポート及び満足感の自覚に違いがあるかを検討したものである。正規雇用者300名を対象とした分析の結果,ハラスメント体験の有無は,仕事の量的・質的負担ではなく,職場での対人関係,情緒的負担,役割葛藤,仕事のコントロール,仕事の適性及び仕事の意義と強く関連していることが明らかになった。また,ハラスメント体験は,深刻な心理的ストレス反応につながる可能性があることが示唆された。今後,ハラスメント体験に起因するストレッサ―の発生過程などをさらに検討することが必要である。
著者
永冨 陽子
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 = Journal of Osaka University of Economics (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.223-233, 2015-05

本論文は,職場におけるハラスメントとメンタルヘルスに関する研究動向と課題について述べたものである。既存の国内の研究報告をレビューした結果,ハラスメントの状況調査が主であり,ハラスメントがメンタルヘルス不調に至るプロセスについての詳細な検討は未だなされていないことが明らかとなった。また、ハラスメントを測定する尺度整備の遅れ,さらにハラスメントを測定すること自体の概念的問題もあることが示された。これらの知見を踏まえ,今後,ハラスメントとメンタルヘルスの因果関係を検証し,ハラスメントがメンタル不調に至るプロセスの精査が必要と考えられた。