著者
吉田 宣夫 高橋 哲二 永尾 哲男 陳 継富
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.177-182, 1993-09-20
被引用文献数
2

ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)を利用して麦稈の栄養価を改善する場合に,子実体生産と両立するか否かの検討を麦稈,麦稈+ふすま20%,オガクズおよびオガクズ+添加物45%の4区を設けて検討した。培養期間は20〜22℃で8週間,子実体発生の誘導は培養4週間後に菌かき・注水して実施し,6週間後に収穫した。菌糸伸張は,オガクズ添加物区,麦稈ふすま区,麦稈区の順に4週目までにほぼ完了し,ビン当り子実体収量(DM・g)は同じ順で12.8,3.6および0.3であった。培地の飼料特性は,乾物が4.3〜22.1%減少し,子実体を収穫するとさらに減少率は大きかった。加温培養中のセルロース変化は,いずれの区も小さかったが,ヘミセルロースの減少傾向は2つの麦稈区で著しく,8週間で40%以上が消失した。また,2つの麦稈区では,子実体収穫後のセルロース減少量が大きくなることがわかった。酸性デタージェントリグニン(ADL)減少率は,オガクズ培地より麦稈のほうが大きく,また,栄養源を添加すると低下した。セルラーゼによる乾物分解率(Ce-DMD)は,2つの麦稈区で4週目まで直線的に減少し,その後回復して開始時より12〜26ポイント改善された。しかし,オガクズ添加物区は8週間減少を続け,子実体を収穫した場合はさらに低下した。培養した麦稈培地を可消化乾物量(DDM)でみると,無添加では11ポイント向上したが,子実体収穫後,ふすま添加のいずれも開始時を下回った。