著者
蔡 義民 藤田 泰仁 村井 勝 小川 増弘 吉田 宣夫 北村 亨 三浦 俊治
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.477-485, 2003-12-15
被引用文献数
29

飼料イネサイレージ調製用乳酸菌をスクリーニングするため, ホモ発酵型で耐酸性が強く, 発酵過程において旺盛に増殖できる乳酸菌「畜草1号」菌株を選抜した。 16S rRNA遺伝子の解析やDNA-DNA相同性試験に基づいて畜草1号菌株はLactobacillusplantarumと同定した。畜草1号菌株を添加したはまさりとクサホナミの飼料イネロールベールサイレージでは無添加サイレージに比べ, サイレージのpH値, 酪酸およびアンモニア態窒素含量が低下し, 乳酸含量が高まった。また, 1年間の長期貯蔵を行っても, 糸状菌の増殖がなく, その品質が良質に保持された。
著者
吉田 宣夫 高橋 哲二 永尾 哲男 陳 継富
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.177-182, 1993-09-20
被引用文献数
2

ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)を利用して麦稈の栄養価を改善する場合に,子実体生産と両立するか否かの検討を麦稈,麦稈+ふすま20%,オガクズおよびオガクズ+添加物45%の4区を設けて検討した。培養期間は20〜22℃で8週間,子実体発生の誘導は培養4週間後に菌かき・注水して実施し,6週間後に収穫した。菌糸伸張は,オガクズ添加物区,麦稈ふすま区,麦稈区の順に4週目までにほぼ完了し,ビン当り子実体収量(DM・g)は同じ順で12.8,3.6および0.3であった。培地の飼料特性は,乾物が4.3〜22.1%減少し,子実体を収穫するとさらに減少率は大きかった。加温培養中のセルロース変化は,いずれの区も小さかったが,ヘミセルロースの減少傾向は2つの麦稈区で著しく,8週間で40%以上が消失した。また,2つの麦稈区では,子実体収穫後のセルロース減少量が大きくなることがわかった。酸性デタージェントリグニン(ADL)減少率は,オガクズ培地より麦稈のほうが大きく,また,栄養源を添加すると低下した。セルラーゼによる乾物分解率(Ce-DMD)は,2つの麦稈区で4週目まで直線的に減少し,その後回復して開始時より12〜26ポイント改善された。しかし,オガクズ添加物区は8週間減少を続け,子実体を収穫した場合はさらに低下した。培養した麦稈培地を可消化乾物量(DDM)でみると,無添加では11ポイント向上したが,子実体収穫後,ふすま添加のいずれも開始時を下回った。
著者
吉田 宣夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.489-493, 2010-11-25 (Released:2011-05-26)
参考文献数
48
被引用文献数
6 2

農林水産研究基本計画が2010年に改訂され,飼料用米の品種育成および栽培,ウシ・ブタ・ニワトリなどに供給する飼料用米の調製加工と給与技術の開発が目標になっている.飼料自給率向上と耕種・畜産経営の課題解決に向けた実用的な技術開発が国,独立行政法人,公立研究機関,大学,民間との連携研究で進められている.これまでの研究成果を活用した飼料用米給与によるブランド畜産物が拡大するなど資源循環型の地域社会形成が始まっている.
著者
田川 伸一 森田 昌孝 堀口 健一 吉田 宣夫 高橋 敏能
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-7, 2014-02

2番草リードカナリーグラス(Phalaris arundinacea L., RCG)を材料とした発酵TMR(Total mixed ration)の発酵品質に及ぼす豆腐粕と製造元の異なる2種類のトウモロコシジスチラーズグレインソリュブルの利用,並びに酵素(商品名:プロセラーゼ10)0.2%添加効果をRCGの混合割合(原物)を45%と65%でパウチ法により検討した。先の報告の1番草RCGを供試したときより2番草RCG発酵TMRの発酵品質のうち,pHは高く乳酸含量は低かった。しかし,酪酸が殆ど検出されなかったためV-スコアとフリーク評点は高かった。また,何れのRCGの混合割合の場合も,酵素添加による発酵品質の改善効果は弱かった。2番草RCGを利用した時の発酵品質の評価が高かった原因に1番草より水分含量が低かったことが考えられた。
著者
田川 伸一 堀口 健一 吉田 宣夫 高橋 敏能
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.7-12, 2011
参考文献数
35
被引用文献数
1

リードカナリーグラス(RCG)発酵TMRの発酵品質に及ぼすミカンジュース粕(CiP),トウフ粕(TC),トウモロコシジスチラーズグレインソリュブル(DDGS)および酵素の利用の影響を調べた。RCGを新鮮物重量比で45%と65%の2段階混合する発酵TMRを調製した。また,市販酵素製剤(プロセラーゼ^[○!R],明治製菓(株),東京)を0.2%添加する区を設けた。1ヵ月の貯蔵後,RCGが65%の割合でDDGSを23%配合して酵素を添加した場合,pHは最も低く4.0だった。乳酸含量はTCとDDGS区の酵素添加が高かった。RCG発酵TMRを調製する場合,TCまたはDDGSを20%程度配合すると良質の発酵品質を得ることができ,酵素を添加するとさらに発酵品質が改善された。
著者
吉田 宣夫 武政 安一 高橋 哲二 増山 忠良
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.359-363, 1993-12-20
被引用文献数
5

茨城県在来のしめ縄用品種「実とらず」と飼料用稲品種「はまさり」を栽培し,登熟途上の生育特性と主に茎葉部の酵素分析結果から,CW画分動態と両品種の利用型について比較検討した。出穂期は「はまさり」が9月13日で,埼玉県で極晩性に属し,「実とらず」は11日早かった。耐倒伏性は,「はまさり」が優れていたが,「実とらず」は糊熟から黄熟期にかけてほぼ全面的に倒伏した。草丈は,「実とらず」が乳熟〜黄熟期の平均値で146.9cmとなり「はまさり」に比較して28.5cmの差(P<0.01)があり,しかも,細茎で乾草としての調製適性が示唆された。乾物収量では,「はまさり」が多収性(P<0.05)を示したものの,両品種とも100〜130kg/aの生産量が認められた。茎葉部割合は,「実とらず」>「はまさり」の関係が登熟過程で常に認められた。茎葉部の栄養価は,両品種いずれも登熟に伴い細胞内物質(OCC)は減少,相対的にOCW(細胞壁物質)は増加したが,OCCの減少に有意(P<0.05)な品種間差が認められた。「実とらず」は急激な減少を示したのに対して,「はまさり」は比較的緩慢な減少を示し,茎葉中に光合成産物の蓄積が大きいことがうかがわれた。OCW中の高消化性繊維(Oa)画分は,いずれの熟期でもほぼ安定し,品種間差は小さくなったが,登熟に伴う低消化性繊維(Ob)画分の増加傾向は「実とらず」で顕著であった。以上の結果から,飼料用水稲の育種においては茎葉比率の高い品種の場合,登熟に伴う茎葉部の飼料価値の減少は水稲ホールクロップに及ぼす影響も大きくなるために,その動態を考慮すべきであることが示唆された。