著者
永田 喜子 岩永 誠
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.113-122, 2015

周囲を忘れる程音楽にのめり込む状態は没入と表現され,強烈な情動体験との関連が指摘されている。本研究は,個人の音楽への没入傾向を測定する尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討した。音楽聴取で生じる感覚や感情に関する表現を収集し,3 因子(時間・周囲の忘却,没頭融合,音響への注意)19 項目から成る音楽没入傾向尺度を作成した。約 1 ヶ月後に実施した再検査法による各因子の相関係数は .60-.62 と比較的高く,十分な信頼性を示した。既存尺度(日本語版 IIIと CEQ-J)と中程度の相関(rs=.43-.49)を示し,基準関連妥当性が確認できた。音楽聴取時の没入を調べた結果,没入傾向高群は低群よりも有意に音楽に没入し(t(39)=4.21, p < .001),尺度の予測的妥当性も確認できた。