著者
星野 悦子 宮澤 史穂
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.11-31, 2016 (Released:2022-01-11)
参考文献数
98

音楽と言語は人間のもつユニークな特性であり,多くの哲学者,思想家,生物学者,心理学者や他の科学者たちが,両者の比較および関係について考察してきた。興味深いことに,さまざまな研究技法の発達に伴い,ここ 20 年ほどの間に音楽と言語の比較研究への関心が復活した。本稿では,まず音楽と言語に焦点を当てた最近の心理学的および進化や発達の研究知見について述べ,次に音楽と言語に関する認知処理モデルとその着想源となった神経科学的知見にも触れる。おわりに今後の展望について考察する。
著者
岩永 誠 森 数馬
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.57-68, 2017 (Released:2022-01-05)
参考文献数
57

本論文は,音楽聴取時の自律神経反応についてレビューし,特に用いられることの多い心拍数(HR)の測定と分析について概説したものである。音楽聴取時の自律神経系反応は,音楽の持つ感情価の覚醒次元に関連して変化する。刺激的な音楽では交感神経活動が活性化し,鎮静的な音楽では副交感神経活動が活性化する傾向にある。また鳥肌感といった強い感情には交感神経活動が関係している。音楽聴取研究で用いられることの多い自律神経系指標であるHR は,反応水準や時系列変化,心拍変動(HRV)による分析がなされている。本論文では,特にHRV の周波数領域解析と時間領域解析の指標化について概説した。研究の目的に応じて指標を選択し,分析することが大切である。
著者
亀川 徹
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.33-43, 2016 (Released:2022-01-11)
参考文献数
6

デジタル技術の登場によって誰でも簡単に録音ができるようになった。しかし音楽の録音を適切におこなうためには,ある程度の知識が必要である。本稿では,音楽を録音する際に必要なマイクロフォンの基本的な原理や扱い方などを紹介しながら,音楽を録音する場合に注意するべき点について説明する。
著者
正田 悠 阪田 真己子 Williamon Aaron
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.35-55, 2017 (Released:2022-01-05)
参考文献数
37

音楽演奏に対する心理的評価に,演奏者と鑑賞者が同じ時間や空間を共有する生演奏が及ぼす影響を調べた。総計110人の鑑賞者に,ヴァイオリンの生演奏あるいは録音演奏の印象について,連続評定(鑑賞中)と全体評定(鑑賞後)で評価してもらった。その結果,曲想の異なる2曲に共通して,生演奏では録音よりも全体的に高い評価がなされ,楽曲の感情的ニュアンスがより明確に受け取られることが示された。その一方で,連続評定の時系列変化については,生演奏では「快・不快」や「覚醒度」の評価が録音よりも抑えられたものになることが示された。このことは,生演奏鑑賞中と鑑賞後の評価が必ずしも一致しないことを示唆する。
著者
米田 涼 沖 将吾 山田 真司
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.5-16, 2015

音楽の経時的な印象に関する研究は数多く行われているが,それらは主にクラシック音楽を対象としていた。本研究ではゲーム音楽,ポピュラー音楽,クラシック音楽を用い,音楽ジャンルの違いによる経時的な印象変化の違いを調査した。また,楽曲の経時的な印象変化と,音響特徴量および楽曲全体の印象との関係についても調べた。その結果,音楽ジャンルに関わらず「快さ」の変化は小さく,「覚醒度」の変化は大きいことが分かった。そして,覚醒度の変化はゲーム音楽,ポピュラー音楽,クラシック音楽の順で大きくなる傾向が見られた。また,楽曲全体の覚醒度は,楽曲中の覚醒度変化の絶対値の大きい部分の平均と対応が良いことが明らかとなった。
著者
永田 喜子 岩永 誠
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.113-122, 2015

周囲を忘れる程音楽にのめり込む状態は没入と表現され,強烈な情動体験との関連が指摘されている。本研究は,個人の音楽への没入傾向を測定する尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討した。音楽聴取で生じる感覚や感情に関する表現を収集し,3 因子(時間・周囲の忘却,没頭融合,音響への注意)19 項目から成る音楽没入傾向尺度を作成した。約 1 ヶ月後に実施した再検査法による各因子の相関係数は .60-.62 と比較的高く,十分な信頼性を示した。既存尺度(日本語版 IIIと CEQ-J)と中程度の相関(rs=.43-.49)を示し,基準関連妥当性が確認できた。音楽聴取時の没入を調べた結果,没入傾向高群は低群よりも有意に音楽に没入し(t(39)=4.21, p < .001),尺度の予測的妥当性も確認できた。
著者
劉 沙紀 矢萩 徹 大西 英治 岩宮 眞一郎
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.73-86, 2015

市販の映像作品の一部を用いて音楽と映像それぞれの印象と調和感の連続測定実験を行い,調和感が形成される心的過程についての検討を行った。本研究で用いた視聴覚刺激においては,類似した印象の音楽と映像が組み合わされ,高い調和感が形成されていた。このような調和感は,意味的調和と言われている。異なる作品の音楽と映像を組み合わせても,音楽と映像の印象は類似せず,意味的調和は形成されない。意味的調和は,音楽と映像の印象を感知した後に形成されるので,形成にある程度の時間がかかる。しかし,一旦調和感が形成されると,音楽と映像の印象の類似性が弱まっても,調和感は持続する。また,映像の展開に合わせて,次第に調和感が上昇する。
著者
高田 由利子 石黒 千晶 岡田 猛
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.21-28, 2019 (Released:2020-06-06)
参考文献数
17

演奏者は作曲家の意図や演奏者自らの意図や,聴衆への伝わりやすさなどを省察しながら練習を重ねる。本研究の目的は,音大生のような学習者の表現の自覚性を測定する心理尺度を開発することである。音楽教育家と心理学者が共同して,演奏表現の特徴を踏まえた演奏表現の自覚性尺度を作成し,音楽学科に所属する 180名の大学生を対象に質問紙を実施した。その結果,演奏表現の自覚性尺度は聴衆への伝達性,演奏者の表現意図と表現方法の調和性,楽譜への忠実性という 3因子からなることが示された。また,各因子に十分な信頼性が確認された(αs>.70)。この尺度は音楽演奏の学習過程を理解する上で役立つ。
著者
劉 沙紀 孫 陶洋子 蔡 祺 岩宮 眞一郎
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-100, 2015 (Released:2022-01-12)
参考文献数
20

音楽と画像の調和感に関する文脈効果を明らかにするために,「陽気な」あるいは「陰気な」印象の音楽と画像を用いて調和感の評定実験を行った。連続した2場面よりなる視聴覚刺激において,両場面とも音楽と画像の印象が類似し,両方の印象とも一貫している場合には,後半に呈示した場面の調和感が高まった。2場面とも,音楽と画像の印象が反対の刺激においては,後半に呈示された場面の不調和感が和らいだ。音楽と画像の印象が一貫している場合には,不調和感の緩和効果がより顕著だった。音楽と画像の印象が類似している場面と反対である場面の組み合わせでは,後半に呈示された類似している場面の調和感,反対である場面の不調和感が抑制された。