著者
永田 智章
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学経済研究論集 = HUE journal of economics and business (ISSN:03871436)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.57-66, 2021-03

本稿は,開放型プロスポーツリーグにおいて,トップリーグ昇格に挑戦するマイナーリーグ所属クラブにとって,その競技力と財務力の両方を充実させる戦略が重要であることを解明する。分析では,プロバスケットボールクラブである広島ドラゴンフライズの経験に焦点を当てた。マイナーリーグからスタートした同クラブは,4季を費やしトップリーグ昇格に成功した。その競技力と財務力を示す数値を標準化して分析すると,悲願成就の背後には健全な財務力が存在することが明確になる。同クラブの場合,フランチャイズである広島を中心とした地域のスポンサー及びパートナーによる支援が,クラブの財務健全化に貢献し,それが成功の鍵であることが確かめられる。また,トップリーグ昇格に挑戦するクラブにとっての財務健全化とは,必ずしも利益拡大を意味しているのではなく,赤字経営を回避しながら,競技力の充実に向けた投資を効率的に行い,そのために必要な収入を安定的に確保することを意味している。