著者
陶山 大志 永石 憲道 坂越 浩一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.161-166, 2012
被引用文献数
1 1

簡易な材質診断法である横打撃共振法によって, 松江城山公園のクロマツ240本について樹幹内部の腐朽・空洞面積率を推定した。本法の診断指標は樹幹直径<I>D</I>と樹幹打撃音の共振周波数<I>F</I><sub>r</sub>の積 (<I>D・F</I><sub>r</sub>値) である。あらかじめ (1) クロマツ健全木30本について本法の測定と伐採調査を行い, 診断基準となる健全木の<I>D・F</I><sub>r</sub>値の平均値と範囲を明らかにした。 (2) 同健全木の円板を用いて空洞面積率と<I>D・F</I><sub>r</sub>値の減少率の関係を明らかにした。本公園の調査木について地上高1 mで本法の測定を行い, (1) (2) の情報に基づき推定腐朽・空洞面積率<I>R</I><sub>iv</sub>を求めた。この結果, <I>R</I><sub>iv</sub>が1&sim;30%は40本 (17%), 30&sim;59%は6本 (3%) であった。本法の精度を評価するため, 27本についてレジストグラフを使用した貫入抵抗法によって推定腐朽・空洞面積率<I>R</I><sub>rg</sub>を求め, 3本について伐採して地上高ごとに実測腐朽・空洞面積率<I>R</I><sub>am</sub>を計測した。<I>R</I><sub>iv</sub>は<I>R</I><sub>rg</sub> (<I>r</I>=0.88) と<I>R</I><sub>am</sub> (<I>r</I>=0.80) の両者との間に高い正の相関が認められたことから, 本法によってクロマツ樹幹内部の腐朽・空洞面積率を推定できることが示された。