著者
江上 智章 橋本 久美
出版者
北海道心理学会
雑誌
北海道心理学研究 (ISSN:09182756)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.9-20, 2020-03-31 (Released:2020-03-26)
参考文献数
31

高齢期では身体機能の低下に加え,社会的役割の喪失や親しい人との離死別など,様々な喪失を経験する。それらの喪失体験を受容する際に生じる抑うつ状態期間の短縮や,配偶者などの死から生じる社会的孤立状態の予防,身体機能低下への適応的な行動変化の発生の備えとして,加齢の受容が必要であると考えられる。本研究では高齢者93 名に質問紙調査を行い,加齢の心理的受容を促進する要因の検討を行った。その結果,加齢の受容には主観的幸福感,経済状態が関連することが示唆された。また,クラスター分析の結果から加齢の受容度が高い高齢者の特徴として,主観的幸福感と経済状態の満足度が高いことが見られた。加えて,一定期間内に複数のストレスフルなライフイベントを経験することは,加齢の受容を妨げる可能性が示唆された。