著者
中川 幹子 江崎 かおり 江畑 有希 宮崎 寛子 手嶋 泰之 篠原 徹二 油布 邦夫 高橋 尚彦 犀川 哲典
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.360-367, 2015 (Released:2015-07-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

乳頭筋や偽腱索などの心室内構造物は,不整脈の発生と密接な関係があり,これらが心室不整脈に対する高周波カテーテルアブレーションの際に,治療の標的部位となることが報告されている.われわれは,心エコー図検査で左室内に偽腱索や乳頭筋肥大を認めた症例における心電図所見の特徴,特にJ波との関係を検討した.偽腱索を有する群は有さない群に比し,J波の出現頻度が有意に高く,QRS間隔が有意に長かった.偽腱索をその付着部位により4型に分類した結果,特に心室中隔と乳頭筋の間に付着する2つの型では,J波の出現頻度が高率であった.また,健常若年男性を対象にした前向き検討でも同様の結果が得られ,加算平均心電図記録で測定したfiltered-QRS durationも有意に長かった.一方,乳頭筋肥大を有する症例は有さない群に比し,J波の合併率が有意に大きく,QRS間隔,QTcおよびJTc時間が有意に長かった.偽腱索や乳頭筋などの心室内構造物が,J波の出現や不整脈の発生と関連がある可能性が示唆された.