著者
田中 幸道 江頭 賢治 吉岡 美智子
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.183, 2017 (Released:2019-06-01)

目的 A病院における動く重症心身障害児(者)で、強度行動障害の中でも特に破衣行為のある患者に対する思いと看護実践について明らかにする。 方法 A病院に入院中の破衣行為のある患者の看護に携わった経験が3年以上を有する看護師5名に対し患者への思いや看護について2〜3名でグループインタビューを行った。逐語録から意味のある文節で区切りコード化し類似するコードをまとめ抽象化を繰り返し、サブカテゴリを〈 〉カテゴリを《 》で表した。本研究は当センター倫理審査委員会の承認を得て実施した。 結果および考察 破衣行為のある患者に対する看護実践の内容について分析した結果、5つのカテゴリを抽出した。看護師は全体の関わりを通して《破衣に至る患者の真意を探求》しており、患者が自分の意志を十分に伝えられないからこそ患者理解に多くの時間を費やし心を砕きながら患者の真意を探求していたと考える。 看護師は患者の〈発達過程から破衣の要因や関わりを検討〉しながら〈患者の好むモノや活動を把握〉することで強化因子を探り〈破衣の要因別に対応の方法を選択〉していた。また、これまでの〈看護師の経験から効果的な看護を引き出し〉《患者の障害特性に合わせて破衣が減少する手立てを探って》いた。看護師は、破衣の要因が重複するケースもあり患者の真意を掴めず患者に適した看護実践の選択に悩みながら《患者の特性を考慮し試行錯誤を重ね》ていた。 そして《他職種と患者の問題行動を共有し対応方法を統一》していた。このことは患者が混乱しない環境を提供するため、支援者の言葉や態度を統一することを重要視していたのではないかと考える。 日々の関わりの中で看護師は《「服は着る」の言い聞かせ》を行っており、患者が将来社会に出て生活をすることを前提に、ソーシャルスキルを身につけてほしいといった看護師の強い思いの表れによって実践していた内容であると考える。