著者
倉茂 好匡 池尻 公祐 鈴木 幸恵 平川 一臣
出版者
日本地形学連合
雑誌
地形 = Transactions, Japanese Geomorphological Union (ISSN:03891755)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.131-149, 2005-04-25
参考文献数
19

当縁川流域での農業開墾は1894年に開始され, その後この流域内の農地面積は1930年ごろより激増した.一方, 当縁川下流部にある湿原内では1986年から1920年の間に蛇行流路の切断が生じ, このため開墾開始後に運搬されてきた土砂が新流路側方に堆積して自然堤防を形成した.この自然堤防堆積物の層序構造観察とその粒径組成および137Cs濃度の分析を行った結果, 砂質物質の堆積が1930年代終わりごろより開始されたのに対し, それ以前の堆積物はシルト質のものであることが判明した.この砂質堆積物に対して粒径分布トレーサー法を用いてその給源を推定したところ, 砂質堆積物は支流である忠類幌内川流域から主に流出してきていることがわかった.また, 本流のうち1980年代に直線化された区間も砂質堆積物の重要な給源となっていた.それに対し, 本流上流部からの砂質堆積物の供給量は少なかった.忠類幌内川流域の農地は, 第三紀層よりなる豊頃丘陵を刻む谷の谷底部付近にのみ存在している.それに対し, 本流上流部の農地は扇状地上に存在する.これらのことから, 特に豊頃丘陵の谷底部で行われた集中的な農地開墾が大きな砂質堆積物流出を招いたと判断した.