- 著者
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池田 宗彰
- 出版者
- 立正大学
- 雑誌
- 経済学季報 (ISSN:02883457)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.1-114, 2005-09-30
力学的物理現象を統一的に説明するものがシュレーディンガー方程式である.物理現象(連続的時間に関する変化曲線で表わされる:因果性)が粗視化されて跳び跳びに観測されて一時点に重ね合わされると確率分布に変換される.これはシュレーディンガー方程式の波動関数の確率性である.しかしこの確率化は不完全である.この確率分布には系列相関(因果性)が残るからである.これが再度変化曲線を形成して再度粗視化され,跳び跳びの観測を受け確率化する.これが繰返されるプロセスで確率は純化されてゆく.これは,一定の視野への粒子の時空値の参入と粗視化の繰返しを伴いながら,階層を上ってゆくプロセスであり,シュレーディンガー方程式の階層上げである.それが,物理現象→生命現象→心理現象,と派生・移行してゆくプロセスを誘導構成する.何となれば,粒子の因果性が確率に変換されることで,粒子に自発性・任意性が出てくる.分子が"自発的"だということは,分子が"確率的"だということと等価である.因果性が不完全に確率化されるある段階で分子に目的概念が出て来,ここが生命の発生点となる.これはRNAレプリカーゼ分子が発生した時点に対応する.それが更に確率化されると任意性が出てくる.ここが心理の発生点である.これはヒトの大脳新皮質の発生点に対応する.以上の一連を統一的に説明するものがシュレーディンガー方程式を構成する波動関数の確率性の"純化"のプロセスである.(加えて,生命現象を表現する連立差分方程式系が,粒子の確率性を表現するシュレーディンガー方程式と等価となることが証明される.また,シュレーディンガー方程式は階層上げに従い,マクロの"粒子"を説明するニュートン力学とも整合的である.さらにまた,上記生命モデルが,進化学の難問であるダーウィンの自然淘汰説と木村資生の分子進化の中立性との同時説明を可能にすることが示される.)