- 著者
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鈴木 慎二郎
沢村 浩
- 出版者
- 日本草地学会
- 雑誌
- 日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.3, pp.324-331, 1981-10-30
輪換放牧における牛の行動の日周性を,移牧との関係において明らかにする目的で,体重の日内変動の面から検討した。試験1では10時と13時に,試験2では10時と16時に,試験牛(200〜240kg)を次の牧区へ移牧し,移牧当日とその翌日にわたって,3時間ごとに体重を測定した。試験1では行動調査もあわせて行なった。1.牛は,移牧直後の3時間において,10kg以上の急激な体重の増加を示しており,この間に大量の採食をしていることが推測された。行動調査の結果もあわせてみると,なかでも牛が採食に集中しているのは,移牧後2時間までであった。牛の体重は,その後も若干ずつ増加するが,日没後からは減少に転じ,19時から翌日4時までに8〜10kg低下した。夜間にも,ある程度の採食行動がみられたが,体重の変動からみれば,量的にはわずかな採食にすぎないものと思われた。ただし,16時移牧の牛では,日没後にも体重が増加しており,牛は採食量が不十分だと,採食行動を夜間にまで延長することが認められた。2.10時と13時の移牧では,行動形のうえからは,移牧直後のほかに,日没前にも採食行動のピークがみられた。しかし,体重増加の点では,両者には大きな差があり,日没前のピークでは,移牧直後のピークにくらべると,牛の採食量はかなり少ないものと思われた。3.移牧翌日の体重は前日のように大きく増加することはなく,前日の最高体重に達することも殆んどなかった。すなわち移牧の翌日における採食行動は,移牧当日にくらべると不活発であり,採食量も少ないものと考えられた。以上のように,輪換放牧における牛の行動は,移牧の影響を強く受けており,移牧当日においては,採食・休息反すうの繰返えしという定形的なパターンとはならなかった。また,移牧当日とその翌日とでは,行動の日周性は大きく異なった。