著者
坂本 信介 畔柳 聴 右京 里那 小林 郁雄 家入 誠二
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.99-105, 2019 (Released:2019-11-13)
参考文献数
17

牧場への野生動物の侵入をカメラトラップ法で調べる際に,カメラの設置位置や設置時期によって結果が大きく変わるかを調べるため,同一牧場内の様々な施設の内外に 1 年にわたり自動撮影カメラを 9 台設置し,飼養形態や利用方式が異なる施設ごとにまた季節ごとに野生哺乳類の出現状況を比較した.哺乳類の撮影頻度は施設間で大きく異なっており,相対的に乳牛舎内,肥育牛舎外,繁殖牛舎外では,食肉類の撮影頻度が高い傾向にあった.また,肥育牛舎,繁殖牛舎,倉庫では,動物の撮影頻度のうちわけが施設の内外で大きく異なっていた.イエネズミとノネズミのどちらもが施設外で撮影されたため,イエネズミの施設内外の移動と施設外での両者の直接的・間接的接触が懸念された.また各動物の出現頻度には季節性が見られた.以上の結果から,牧場内でカメラトラップ法を用いる際には,撮影地点や設置時期の選定が調査結果に影響を及ぼすと考えられる.
著者
平山 琢二 北内 毅 眞榮田 知美 藤原 望 平川 守彦 及川 卓郎
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.67-71, 2013-03-29 (Released:2013-07-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本試験では,食味試験に関して予備知識ならびに特に訓練を受けていない男性および女性を含めた 一般消費者を対象に,一般的な肥育期間で飼養された和牛,長期肥育で飼養された和牛さらにホルスタイン牛の脂肪交雑の極めて少ないランプ部位の赤身肉を供試肉として,官能試験を実施し実際の牛肉の赤身肉の美味しさに対する評価について検討した.供試牛肉の食感は,男女間で有意な差はなく,男女ともに柔らかさ,弾力およびあぶらっこさの3項目において,一般牛肉(ホルスタイン)<通常牛肉<長期牛肉の順に有意に良いと評価された.一方,供試牛肉の多汁性について,男性では一般牛肉<通常牛肉<長期牛肉の順に有意に良いと評価したのに対し,女性の場合,いずれの牛肉間でも有意な差は認められなかった.供試牛肉の食味および総合評価では,男女間で有意な差はなく,男女ともに全ての項目において,一般牛肉<通常牛肉<長期牛肉の順に有意に良いと評価された.供試牛肉の食感,食味および総合評価の年代差について,いずれの項目においても,年代間の有意な差は認められなかったものの,若者に比べ成人が牛肉間の評価差が明確であった.本試験において,牛肉の赤身肉の美味しさに関する感じ方は,多汁性には男女間差があったものの,ほぼ同様に判別し,長期肥育した和牛肉をもっとも美味しいと評価した.また,年齢層において牛肉の美味しさに関する感じ方に大きな差は認められず,長期肥育した和牛肉をもっとも美味しいと評価した.
著者
宮薗 勉 大六野 洋 福留 憲浩 溝下 和則
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.255-259, 2015 (Released:2016-01-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

2006 年12 月から2011 年10 月までに分娩した鹿児島県内の牛群検定終了データのうち搾乳日数が240 日以上で泌乳持続性の明らかな初産から6 産までの4,990 記録を分析に供した.分析では一泌乳期の評価形質を対 象に,母数効果として分娩年,産次,分娩月,変量効果として個体の育種価,誤差を取り上げた.泌乳持続性に及 ぼす産次の影響は,初産で正の効果を及ぼし,2 産以降低下し4 産で最も大きな負の効果を及ぼした.また,泌乳 持続性に及ぼす分娩月の影響は,6 月から9 月までは正の効果を及ぼし,10 月から5 月までは負の効果を及ぼした. また,育種価を個体の出生年別に平均した県内雌牛群の泌乳持続性の遺伝的趨勢は2001 年から2009 年まで- 0.105 から0.068 の範囲にあった.
著者
日置 久美子 川崎 千穂子 山元 正博 林 国興 屋 宏典
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.45-53, 2015 (Released:2015-07-01)
参考文献数
16

本研究では黒麹および黒麹リキッドフィード(LF) 給与が肥育豚の生産性に与える影響を調べた。実験1 では鹿児島バークシャーを用い、市販配合飼料に黒麹0.05%および0.1%を配合して給与した。その結果、無添加対照区に比べ黒麹0.05%区において増体量は改善傾向にあり飼料要求率(FCR)は有意に低下した。実験2 では三元交雑種(LW・D)去勢雄に乾物として配合飼料の20%および40%をLF(食品残さを黒麹で発酵させた)で代替して与えた。その結果、対照区(配合飼料区)に比べ20%給与区で増体量は改善されFCRは低下した。実験3 では、実験2 に準じ、配合飼料の20%を2 種のLF(黒麹と2 種の乳酸菌で調製した)で代替して与えた。その結果、Lactobacillus casei で調製したLF 給与区において、増体量およびFCR が顕著に改善された。以上のことから、黒麹を利用して栄養価の高いLF を作ることができ、黒麹給与により肥育豚の生産性が向上することが示された。
著者
大小田 勉 井之上 弘樹 高橋 宏敬 喜田 克憲 多田 司 井尻 大地 大塚 彰
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.77-86, 2020 (Released:2021-05-17)
参考文献数
26

体重約60kgの「かごしま黒豚」(バークシャー種去勢雄)27頭を,トウモロコシ・大豆粕主体の対照(0%)区と甘藷を10%,20%,30%配合した試験区に分け(6~7頭/区),TDN70%・CP13.5%の各試験飼料を制限給餌して,115kgに達した時点でと畜・解体した.甘藷配合量の増加に伴い,1 日増体量は0%区の602gから,20%および30%区の565gへと減少し,出荷日齢は10%区が最短で,30%区が最長であった.枝肉重量は20%区で最も低かったが、ロース断面積および上物率に負の影響はなかった.筋組織中の19種類の代謝物が甘藷給与に応答して有意に増減し,タンパク質代謝経路の変動が示唆された.食味評価においては,甘藷給与区では“香りの好ましさ”と“脂肪のサッパリさ”についての評価が高く,30%区では“噛み切りやすさ”,“咀嚼しやすさ”,“歯ごたえの好ましさ”についての評価が最も高かった.
著者
波平 知之 高橋 憲司 仲村 一郎 赤嶺 光 HOSSAIN Md. Amzad 玉城 政信
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.189-194, 2011 (Released:2012-03-20)
参考文献数
15

沖縄県内の黒毛和種子牛生産における妊娠期間の2001~2010年の推移と,それに関する産次,子牛性別,子牛の父牛の系統について検討した.平均妊娠期間は287.7±5.5日で,産次ごとでは初産次の286.2±5.8日が最も短く,2産次以上より有意(p<0.01)に短かった.産次を経過するにつれ妊娠期間は長くなり8産次で288.8±5.6日と平均より1.1日長く,最大値となった.雄子牛の在胎期間は雌子牛に比べて有意(p<0.01)に1.2日長かった.子牛の在胎期間を父牛の系統別に比較すると田尻系は藤良系よりも0.7日,気高系よりも1.1日いずれも有意(p<0.01)に長かった.分娩年次では2001年の妊娠期間が286.5日と最も短く,年次を経過するにつれほぼ長くなったが,年次を経るごとに産次数も増加傾向にあり,重回帰分析によると妊娠期間に対して有意な関係があるのは産次であった.したがって年次の経過に伴う妊娠期間の増加は産次がその要因の一つと示唆された.
著者
新垣 大地 及川 卓郎
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.5-12, 2021

<p>沖縄県黒毛和種は,暑熱ストレスに対する順化により空胎期間(DO)を減少させるという仮説を検証するため,体感温度順化の効果について検討した.沖縄県内で2008年から2016年に分娩した雌牛の記録からDOを抽出した.分娩後のDOは21d以下を除き,22dから50dを50d,250d以上を250dと設定した.対象地域は沖縄島地域と八重山地域とし,温湿度指数(THI)を参考に暑熱期を上昇期と下降期に,その他の時期を熱的中立期に分けて分析した.下降期のDOを暑熱ストレスに順化済みの反応と仮定し,この時期と上昇期の未順化時期を比較した.線形モデル分析では,2乗平均平方根誤差(RMSE)を用い上昇期のDO推定値の誤差が最小となるTHI補正値を算出した.その結果,上昇期に該当するTHIで+7程度の補正値が得られ,上昇期は下降期よりTHI +7だけ温度未順化によるストレス反応がDOにおいて示された.本研究の結果,暑熱ストレス発生時期のうち,特に上昇期に注目した研究調査がDOの改善に有効であることが示された.</p>
著者
田中 和宏 井口 寿郎 川畑 明治 山下 光則 川野 洋 今村 一秋
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
西日本畜産学会報 (ISSN:09143459)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.23-30, 1996-08-01 (Released:2010-08-25)
参考文献数
11

搾乳牛の分娩時期によって泌乳曲線がどのように変化するかを考察する目的で, 分娩月別泌乳曲線を作成し, 分娩月別の乳牛による夏期における生産性や経済性を検討した。初産, 経産牛ともに4~8月分娩牛はピークのほとんどない泌乳曲線になり, 特に乳量水準の高い8, 000kg以上の牛で5~8月分娩牛になると乳量水準も低くなった。2~4月分娩牛の305日生産乳代がもっとも高く, 5, 6月分娩牛がもっとも低く, 8~12月分娩牛は夏期乳生産にほとんど貢献していなかった。結論として夏期需要期における乳生産のためには, 分娩時期を考慮することが必要であり, 経済性と繁殖サイクルを含む生産性から考慮すれば, 夏 (5~7月) 分娩は望ましくなく, それよりやや早い2~4月分娩の方がより望ましいと考えられる。
著者
波平 知之 屋良 朝宣 伊村 嘉美 モハメド アムサド ホサイン
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.83-89, 2019

<p>沖縄地域における低温期の牧草生産を補完する目的で,ジャイアントスターグラス(GS)草地にイタリアンライグラス(IR)を追播し,2 水準の刈取処理(刈取高さ 5 cm と 15 cm)が GS 単播草地,IR 単播草地および IR 追播草地の乾物収量および栄養価に及ぼす影響について検討した.低温期における乾物収量への刈取高さの影響は GS 単播草地にのみ認められ,草地間で比較すると刈取高さ 5 cm の GS 単播草地が最も低い乾物収量となった.IR 単播草地と IR 追播草地では乾物収量に及ぼす刈取高さの影響は認められず,GS 単播草地に比べて高い乾物収量が得られた.各処理区における粗タンパク質含量に有意差は認められなかたが,<i>in vitro </i>乾物消化率はいずれの刈取高さでも IR 単播草地と IR 追播草地が GS 単播草地より 20 ポイント有意に高い値となった.粗タンパク質収量はいずれの草地ともに刈取高さ 15 cm で高く,可消化乾物収量は IR 単播草地と IR 追播草地では刈取高さ 5 cm において,GS 単播草地では刈取高さ 15 cm において可消化乾物収量が高くなる傾向を示した.以上のことより,IR 追播草地における刈取高さ 5 cm の刈取処理は,沖縄地域の低温期における草地管理として乾物収量および栄養価の面から効果的な管理技術であることが示唆された.</p>
著者
新垣 大地 及川 卓郎
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.91-98, 2019

<p>本研究は,沖縄県黒毛和種の分娩後空胎期間(DO)に対する暑熱ストレスの影響について明らかにする目的で行った.DO は 21 d 以下を除外し,22 d - 50 d を 50 d,250 d 以上および欠測値を 250 d と設定した.分娩年は 2008 年から 2012 年の 5 年間,産次は 6 産目までとし,制限後は農家 194 戸における雌牛 13,610 頭分の分娩記録 33,777 件であった.分析モデルは分娩季節,分娩月,分娩日の温湿度指数(THI)の共変量またはTHI の主効果を含む 4 モデルである.分娩季節の分析では夏(123.85 d)に最高値を,秋(119.26 d)に最低値を示した.分娩月の分析では 6 月(127.58 d)に最高値を,4 月(115.65 d)に最低値を示した.THI を共変量とした時,THI 70 - 71 で最低値(144.86 d)を示した.THI を主効果とした時,THI 56 - 60 で最高値(124.13 d)を,THI 61 - 65 で最低値(118.83 d)を示した.これらのモデル分析により暑熱時期に入る 6 月または THI 70 以上での DO 増加が確認された.秋と春の分娩後には DO が減少するため,繁殖適期であると考えられた.</p>