著者
宇野 信吾 河上 祥一 川村 亮一 中野 宏俊
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.386-391, 2020 (Released:2020-12-10)
参考文献数
10

ワクチン接種前の乳幼児での百日咳罹患は重症化し易く,その感染予防対策に資するため妊婦及びその児の百日咳抗体保有状況を調査した.文書同意を得た妊婦を対象に,妊娠中,臍帯血及び出生児(1カ月齢)50組について,百日咳PT及びFHAに対する抗体価を測定した.PT及びFHAの抗体陽性率は,妊婦で40.0%及び62.0%,臍帯血で48.0%及び80.0%,児で16.3%及び34.7%.幾何平均抗体価は,妊婦で7.1及び11.2EU/mL,臍帯血で9.6及び16.9EU/mL,児で4.5及び7.0EU/mLであり,いずれも児では低値を示した.なお,各抗体価は妊婦と児の間で正の相関が認められた.本研究の対象児の抗体陽性率,幾何平均抗体価は低く,生後3カ月からの百日咳含有ワクチン接種による免疫獲得までの罹患リスクは高い.乳幼児の感染予防の観点から妊婦への百日咳含有ワクチン接種等の対策が必要である.