著者
岡本 大輔 河内 充 監物 康弘 早田 博行 井上 明元 深津 達弥 泉宮 謙太 難波 秀樹
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.139-144, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
7

近赤外線分光法(near infrared spectroscopy:NIRS)は、心臓および胸部大血管手術における周術期の脳循環代謝モニタリングとして使用される。今回、維持透析患者の病態生理がNIRS測定値へ与える影響と要因について非透析患者と比較しRetrospectiveに検討した。その結果、維持透析患者の局所的組織酸素飽和度(regional oxygen saturation:rSO2)は非透析患者より有意に低値を示した。手術開始時のヘマトクリット(hematocrit:Hct)値は維持透析患者が有意に低値を示したが、rSO2との相関を維持透析患者のみで認めなかった。また、rSO2と透析年数に負の相関を認めたが、年齢には維持透析患者のみで相関を認めなかった。さらに維持透析患者においては、rSO2と脳脊髄液層(cerebrospinal fluid layer:CSF layer)の幅に負の相関を認めた。今回の結果が、維持透析が脳の萎縮に影響を与えているとの報告と同様の変化を示していることから、維持透析による脳萎縮が脳脊髄液層の厚みに変化を与え、NIRS測定値が非透析患者と比較して低値を示したと推察される。