著者
崗本 建澤 河原 茂
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.507-524, 1992
被引用文献数
1

Jarabak分析法の特徴は, 分析項目を骨格系と歯牙系に大別し, 骨格系において成長方向を詳しく解析している点である. この分析法では, 頭蓋顎顔面に関する計測項目を数多く設けているため, 頭蓋顎顔面全体の成長に伴う形態変化を把握できるという長所を有している. <br> そのため, 小児歯科臨床において頭部エックス線規格写真を用いて小児の顎顔面系の成長変化を追跡する分析法としては最適のものと考えられる. そこで, このJarabak分析法における各計測項目の経年的なデータを求めると同時に, この分析の骨格系の計測項目を経年的に分析することにより, 小児から成人へと成長する際の頭蓋顎顔面の変化について調査した. その結果, <br> 1) 10歳から15歳までの日本人のJarabak分析各計測項目における平均値および年間成長量を求めることができた. <br> 2) 本研究により得られた日本人の資料による顔面の成長パターンは, 前下方への成長を示すJarabakのいうstraight downward typeではなく, わずかではあるがcounterclockwise growth typeの成長パターンを示す傾向があることがわかった. <br> これらのデータは, 小児歯科臨床において頭蓋顎顔面の成長を考慮した咬合誘導を行う際に, 重要な参考資料になると考える.