- 著者
-
河口 義隆
- 出版者
- 山口大学医学会
- 雑誌
- 山口医学 (ISSN:05131731)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.2, pp.105-112, 2017-05-01 (Released:2019-06-08)
- 参考文献数
- 14
緑膿菌に対するタゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC)の効果を投与量,投与回数,投与時間を変化させた12通りの投与方法で検討した.モンテカルロシミュレーション法を用いて%Time above MIC(%T>MIC)が50%以上得られる確率(Target Attainment%:TA%)を腎機能別に算出し,TA80%以上を満たす投与方法を導出した.薬物動態パラメータは日本人肺炎患者における母集団薬物動態(population pharmacokinetics:PPK)解析結果より,MICは2011年から5年間に山口大学医学部附属病院で分離された緑膿菌のアンチバイオグラムからMIC90値を設定した.50%T>MICが得られる確率(TA)80%以上かつ,より患者負担の少ない(低用量,少回数,短時間投与)投与を優先することを推奨する最適投与方法の基準とした.2015年の結果では,クレアチニンクリアランス(CLcr)20mL/min未満の患者で2.25g1日4回投与,CLcr20から29mL/minの患者で4.5g1日3回投与,CLcr30から79mL/minの患者で4.5g1日4回(それぞれ1回1時間点滴),CLcr80mL/min以上の患者では4.5g1回3時間点滴を1日4回投与が推奨された.ただし,期間ごとのMIC90値には変動性があり,値が高くなると適応用量内では最適投与方法が推奨できない結果も得られた.腎機能別に患者を層別化し,感受性が不良な菌種における直近のアンチバイオグラムからMICを設定することで,経験的治療においてもPK/PDを考慮した最適な投与方法が推奨可能であった.