著者
芝原 美由紀 河合 美智子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.B0658-B0658, 2004

【はじめに】学齢期の肢体不自由児に対して、PT関与の重要性は今まで多く報告されている。横浜市西部地域療育センターでは、学齢期の肢体不自由児にPT訓練を実施、又、専門クリニックのシーティングクリニックではPT・OTが業務として関わっている。学齢肢体不自由児の中でも重症心身障害児は、特に日常の生活体調の基礎である呼吸状態に配慮した姿勢設定をする必要がある。今回、成長に伴い座位保持装置を再作製した重症児3例から、PTが専門的な評価・判断から関わる必要を感じたので報告する。<BR>【対象と方法】対象はPT訓練を実施している学齢児3例である。3例は重度心身障害児で、呼吸状況は不安定で全員経管栄養である。症例1養護学校訪問学級の小学1年。染色体異常、痙れん発作で、気管切開している。痙性四肢麻痺で体幹は過緊張、強い前弯があり、両側股関節脱臼がある。症例2養護学校2年。難治性痙れん発作があり、不随運動を伴う混合型痙性四肢麻痺である。左に凸の側弯で左股関節脱臼がある。呼吸状態が不安定で、家庭に酸素が準備されている。症例3養護学校の5年。先天性サイトロメガウィルス感染症、痙れん発作を伴う四肢麻痺である。頭部頸部は正中保持が困難で、この姿勢により呼吸状態が変動する。左に凸の側弯と両側股関節が脱臼している。<BR>3例の重症児に対して、生活状況と機能評価を実施した。運動機能として姿勢筋緊張の影響、支持面の設定と負担など検討した。良肢位としての座位ではなく、生活の中で座位がどのような意味があるのか、考慮した。これにより介助軽減だけでなく、家族のニードに合うものを考え対応できる。呼吸と変形、座位の耐久性、と判断視点が多様であった。<BR>【結果と考察】3例共に体調は変動が大きく不安定で、しかも覚醒や姿勢により呼吸状態・反応性が影響されていた。症例1はわずかな姿勢変化で全身に反り返りが生じる。訪問学級の指導場面で積極的な肢位設定が必要な事から、緊張の影響が軽減するような座位を検討した。症例2は不随運動と体幹の非対称に対し座位を検討した。症例3は頭部非対称姿勢が呼吸に影響していた。呼吸安定する頭部と体幹の位置を評価し、家族と過ごせる場面の使用を検討した。3例は就学前の座位保持設定の変更が必要であった。<BR>在宅の重症児の場合、姿勢設定は本人の機能に基づくのは当然であるが、生活でどのように使用するのか、家族の意図を配慮した視点も必要であった。今回、座位自体がダイナミックな機能でもあることが確認できた。PTは評価として運動障害を明確にし、その上で生活場面を具体化していくことが重要である。姿勢設定は将来の機能に大きく影響し、生活の質に直結している。ヘルスプロモーションとして座位姿勢設定を提示するPTの評価が必要であった。重症児の座位姿勢設定に専門職として関わることが重要と考えられる。