著者
河村 智也
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、胎生期ストレスを与えられたラットの依存性薬物に対する感受性の変化を、脳内における生化学的・形態学的変化と関連することを目的とした。そこで本年度は、胎生期ストレスが仔に及ぼす影響のうち、脳形成に及ぼす影響と、成長後のストレスに対するコルチコステロン反応およびコカイン報酬効果に及ぼす影響を検討した。胎生期ストレスとして、妊娠13日目から17日目まで、1日3回母親を強い光の下で拘束した。生後10日で仔を灌流し、ストレス期間中の細胞新生の様子をBrdU免疫組織化学染色により観察した。また、同じくストレスを受けた母親から生まれた仔について、成長後のコカイン報酬効果に違いがあるかをコカイン誘発性条件性場所選好法を用いて測定した。加えて、ベースラインレベル、30分の拘束ストレス終了直後、1時間後、2時間後における血漿中コルチコステロン放出量を測定した。その結果、胎生期ストレスを受けた群は、受けなかった群に比べて側坐核、海馬で著しい細胞新生の減少を示したが、扁桃体では大きな違いを示さなかった。成長後、胎生期ストレス群のラットは、ベースラインレベルとストレス終了2時間後において、非胎生期ストレス群よりも高いコルチコステロン放出量を示した。しかしながらコカイン誘発性条件性場所選好の成立に両群間の違いは見られなかった。以上の結果より、胎生期ストレスは成長中の脳形成と成長後のコルチコステロン反応に影響を及ぼすが、コカイン誘発性条件性場所選好には影響を及ぼさないことが示唆された。