著者
河村 智志 平井 光行
出版者
水産庁日本海区水産研究所
雑誌
日本海区水産研究所研究報告 (ISSN:00214620)
巻号頁・発行日
no.43, pp.p83-92, 1993-03

日本海の佐渡島周辺海域におけるスルメイカ北上期の漁獲量の経年変動に果たす海況要因の役割を明らかにするために,1980~1991年の日本海スルメイカの資源量指数と50m深における暖・冷水域の分布状況を説明変数とした重回帰解析を行い以下の結果を得た。(1)北上期漁獲量の経年変動は,資源量指数単独の場合より海況変動要因を加えた方がよく説明され,漁獲量変動に果たす暖水域の動向と冷水域の接岸状況の重要性が確認された。(2)北上期漁獲量変動(Y)は,資源量指数変動(X1),冷水域の東西方向の変動(X3),暖水域の南北方向の変動(X4)に対して最も重相関関係が高く(r=0.93),次式のような重回帰式が得られた。Y=-36.96+136.18X1-10.16X3+11.81X4 (3)回帰式に用いた2つの海況要因のうち,能登半島から佐渡島周辺海域に及ぶ暖水域の北上は,スルメイカ魚群の補給機構,佐渡島付近への冷水域の接岸は魚群を滞留させる障壁効果に関わる海況要因であると評価することができる。