著者
河村 榮吉
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.297-303, 1941-03-28

本報では梨赤星病菌の精子整傳達して本菌の受精を媒介する要因中, 特に昆蟲に就ての實驗, 觀察並に之に附随する二, 三の事項を報告した。その結果を要約すると, 1. 梨赤星病の病斑に生ずる蜜は還元糖を含有してゐて甘いが臭ひはない。2. 天然に赤星病の發生した梨樹から昆蟲の襲來を防ぐと, 銹子腔の形成は半減した。3. クロルリバへ, イヘバヘ, シマハナアブ, ルリアリは本病菌の精子傳達を媒介して銹子腔形成を招來せしむることか實橙證せられた。4. 次の昆蟲は本病菌の精子を病斑から病斑へと傳達することが野外觀察の結果確められた。之等の中, 蠅類が最も普通に傳達し, 蟻類が之に亞ぐ。イヘバヘ, ヒメニクバヘ, クロルリバヘ, クロツヤハナバヘ, シマハナアブ, ホシハナバへ, エゾコヒラタアブ, ヤマトヒラタアブ, ホソヒラタアブ, クロヤマアリ, アメイロアリ, ルリアリ, アミメアリ, クロクサアリ, クロオホアリ, アカハラヒラタアブ, ヤドリバチ, アカスヂチュウレンジ, ウリハムシ, ヒメマルカツヲブシムシ。5. 受精が行はれると, 蜜の分泌は不受精のものに比し速かに停止した。