著者
中村 義男 加美山 隆 河村 純一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

われわれがこの研究で得た成果は、以下のようにまとめられる。1.金属・非金属系:セシウム・メチルアミン・アンモニア系のCs-133のNMRスペクトルと電気伝導率の測定を行い系の示す金属・非金属転移と濃度ゆらぎなどの溶液構造との関連を明らかにした。またナトリウム・アンモニア系で200MHzのESR測定を行い、バルクの金属化に先立つ電子の非局在化を示唆する結果を得た。また酸化物ガラス中にビスマス、銀のナノサイズ超微粒子を析出させ、その光学吸収、融解温度などの物性の微粒子のサイズ依存性を明らかにした。タリウム・カルコゲン化物系の濃度ゆらぎと系の電気的性質の関係を明らかにした。2.有機・無機超イオン伝導ガラス系:ヨウ化銀と・ヨウ化テトラアルキルアンモニウム系のアルキル基のサイズを変えることにより、さまざまなヨウ化銀の容積分率のガラス試料を作製し、その交流伝導率を測定した。その結果、容積分率0.35付近で、顕著なパコレーション的なイオン導体・絶縁体転移を示すことがわかった。銀イオンと有機塩のプロトンのNMR、中性子錯乱、X線小角散乱などにより、このガラス中のイオンと分子の微視的運動状態についてさらに詳細に調べた。3.無機塩・分子性液体系:硝酸リチウム・グリセロール系では、塩の濃度の増加とともに粘性が増大し、電気伝導率は低下することがわかった。この系のグリセロールの分子運動を中性子の準弾性散乱の測定から調べた。また塩化リチウム濃厚水溶液とそのガラス中の水分子の運動をNMRにより測定し、中性子散乱の結果と比較検討した。これらの系ではイオンを介した低分子物質のネットワーク構造形成が系の物性を支配していることが分かった。これらの結果より、異種結合混在系の液体あるいはガラスでは、異相分離的(同種安定)、もしくは秩序形成的(異種安定)な「局所的ゆらぎ」が、系の電気物性を支配していると結論される。