著者
河村 裕太 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-137, no.2, pp.1-11, 2016-05-23

データセンタやクラスタ環境で仮想化技術の利用が広がっている.こうした環境では,仮想マシン (VM) を稼働させたまま異なるホスト間で移動する,VM Live Migration という技術を用いることができる.VM を退避したうえでの物理マシンのメンテナンスや,高負荷な VM を移送させて負荷分散が容易になるメリットがある.しかし,現在広く用いられている Pre-copy 方式は,メモリの全ページを転送し,変更の生じたページを逐次再送するため,VM の移送に時間がかかってしまう.また,DBMS を稼働させている VM の移送では事態が深刻化する.DBMS は大容量のデータをキャッシュし,トランザクションによるページの書き換えがあるため,ページの再送が頻発してしまう.本研究では DBMS のキャッシュのページ転送を削減し,仮想マシン移送を高速化させる手法を提案する.提案手法は DBMS のキャッシュのページ転送を省略し,共有ストレージから復元することでページ転送量を減らす.提案手法を Xen 4.4.2,Linux 3.18.20,MySQL 5.6.26 に対して実装した.読み取り専用なワークロードを実行する DBMS を稼働させている VM を移送したところ,最大で約 20%の総移送時間を削減できた.