著者
河津 浩子 木村 英子 田中 康子 藤井 博英
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.32-34, 2006

意識障害がある患者は, 唾液腺に対する物理的刺激が低下し, 唾液分泌低下をきたしている. 先行研究では, 酸味刺激による唾液分泌を図った口腔ケアが主流であった. しかし今回, 従来の口腔ケアに歯ブラシを利用し, 舌体の奥から舌尖, 舌小帯後方から舌尖へ舌を上下させる運動 (以下, 舌の上下ブラッシング法) を機械的に加えることで唾液腺を刺激し, 唾液分泌の促進が図れるのではないかと考えた. そこで, 意識障害があり, 歯磨きおよび経口摂取が不可能な患者10名に対して, 従来の口腔ケア (歯ブラシを用いたブラッシングでの口腔清拭 ; 対照群) と, 従来の口腔ケア後に舌の上下ブラッシング10回を加えた口腔ケア (介入群) を行い, 比較検討した. 口腔ケアの実施直前, 直後に唾液量を唾液浸潤度検査紙 KS─3エルサリボで測定した結果, 対照群と介入群の比較では, 舌下粘膜での唾液量に有意差を認めた. また, 口腔ケア前後の舌上 ・ 舌下粘膜での測定の結果, 対照群と介入群の比較でも有意差を認めた. このことから, 従来の口腔ケアにおいても唾液分泌が促されていたが, 舌の上下ブラッシング法を加えたことによってさらに唾液分泌が促されたと考えられる. 今回の舌の上下ブラッシング法は, 物理的刺激を加えることで従来の口腔ケアを生かし, 唾液分泌を促進させることができたと考えられる.