著者
今井 美香 平井 真理 桑原 裕子 岩瀬 敏 西村 直記 清水 祐樹 菅屋 潤壹 藤井 徹也
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.111-120, 2011-04-20 (Released:2016-08-01)
参考文献数
13

目的 : 本研究では,仰臥位と座位で排便時の怒責圧の強さの差異が循環系に及ぼす影響を検討した. 方法 : 健康な成人男女 21人 (平均年齢 32.7 ± 10.1歳) を対象に,室温 27℃,湿度 50%に設定した人工気候室で実験を行った.被験者は仰臥位および座位姿勢をとり,1回 15秒の怒責をかけた.怒責圧は10,20および 30mmHgとし,その時の血圧と心拍数を測定した. 結果 : 仰臥位と座位ともに,怒責圧が高いほど血圧 ・ 心拍数の変化は大きかった.血圧や心拍数の変化は怒責中のみならず,怒責解除後も怒責圧が高いほど大きかった.また怒責圧 30mmHgの場合では,Ⅰ相から Ⅱ a期の収縮期血圧の変化量が座位 41.43 ±13.30,仰臥位 26.86 ± 19.59mmHg (p<0.001) と,座位のほうが大きかった.怒責圧10 ・ 20mmHgでも同様であった.また,Ⅰから Ⅱ a期,Ⅲから Ⅳ相の心拍数で座位のほうが有意に大きな変化量を示した (p<0.01) 結論 : 排便時に強く怒責をかけるほど循環系へ与える影響は大きく,また同一怒責圧時における循環系の影響は座位のほうが大きいことが明らかになった.
著者
吉田 祐子 矢野 理香
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.140-147, 2014-08-20 (Released:2016-06-06)
参考文献数
34

本研究の目的は,皮下注射施行前の皮膚消毒の必要性に関する先行研究の内容と動向を明らかにし,今後の課題を検討することである.Cooperの統合的文献レビューの方法を参考に文献検討を行った.PubMed,CINAHL,医学中央雑誌web版で,「注射」,「消毒」,「インスリン自己注射」,「糖尿病」,「インスリン」をキーワードとし,文献検索を行った結果,7件の国内文献と13件の海外文献が分析対象となった.その結果,国内の研究は7件中6件が実態調査であった.日本では,皮膚消毒の実施率は高い傾向にあり,実施の有無には医療者の指導方針が関連すると推測された.海外では,皮下注射前の皮膚消毒と感染の関連性がないことが検証され皮膚消毒を強く推奨していなかった.しかし,消毒不要の適応範囲は曖昧であり,今後,皮膚消毒を省略できる対象者の特性や条件を明らかにする必要がある.
著者
吉良 いずみ
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.33-42, 2013-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
31

本研究の目的は,1日の水分摂取量と排便状態との関連と,水分摂取による排便状態への効果に関する文献レビューを行い,便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスを明らかにすることである.文献検索はPubMed, CINAHL,医学中央雑誌web版を使用しconstipation, fluid intake, water intakeをキーワードとした.その結果得られた,成人を対象とした水分摂取量と便秘症状に関連する実態調査7件と,介入評価研究7件についてCooperの統合的文献レビューの方法を参考に分析した. 結果,1日の水分摂取量が500mL以下の場合は排便量を減少させ,便秘症状につながることが示唆された.一方,便秘症状を有する対象に水分摂取を促すことは,対象が脱水傾向にある場合は便秘症状の改善に有効だが,脱水傾向がない場合は水分摂取量の増加による排便状態への効果を裏付ける有効なエビデンスはなかった.
著者
加藤 京里 菱沼 典子 田上 恭子 加藤木 真史 細野 恵子 田中 美智子 留畑 寿美江 丸山 朱美 酒井 礼子 井垣 通人 塚本 紀子 野月 千春 加藤 祥子 山崎 好美
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.28-37, 2012-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
38
被引用文献数
1

本研究の目的は,4週間の排便記録を通して排便パターンの実態を調査し,排便状態の判断基準を検討することである.20歳以上の男女に4週間にわたり排便ごとに便形 (水様便,泥状便,普通便,硬便),排便量 (母指頭大,手拳大以上と,その中間) について排便記録をつけてもらった. 排便記録は便宜的標本抽出にて224名より回収した.データに不備があるものと疾患による影響が考えられる5名の記録はのぞき,男性50名,女性169名の計219名 (平均年齢38±14歳) を分析対象とした.排便パターンはあらかじめ基準をおかず排便状況が似ているもので分類し,排便日数,回数,便形,排便量から帰納的に各基準を抽出して「問題なし (n=147) 」「便秘 (n=51) 」「下痢 (n=13) 」「下痢と便秘 (n=8) 」と命名した.薬剤の服用者27名をのぞいた192名での分析においては,「便秘」の排便日数は平均3.5日/週であり,同時に便形や排便量も考慮して便秘かどうかが判断されていた.「下痢」は日数や量よりも泥状便,水様便があることが基準になると考えられた.性別では女性が,年齢では「20歳代」に便秘の傾向が認められた.
著者
棚﨑 由紀子 深井 喜代子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.124-134, 2016-08-20 (Released:2016-09-30)
参考文献数
37

本研究の目的は, 冷え症の女性高齢者に対するフットマッサージの冷え症状の緩和ケア技術としての有用性を, 生理的 ・ 主観的指標によって検討することである. 被験者は冷え高齢者25名 (73.4±5.4歳) と対照としての健康高齢者27名 (71.3±4.3歳) とし, 無作為化によらない2群比較を行う準実験研究デザインで行った. フットマッサージは足部から下腿部を20分間, 両手掌で軽擦して行った. その効果を皮膚温, 血流量, 心拍変動等の生理指標とPOMS短縮版, 下肢の温かさの主観的指標により評価した. その結果, 両群ともに皮膚温, 血流量は介入前と比べて有意に上昇し, 心拍数は低下した. また, 右足への介入後に血圧は有意に低下し, HFは上昇, LF/HFは低下した (P<0.05). さらに, 両群の下肢の温かさの自覚も有意に増した (P<0.05). 以上のことから, 冷え高齢者に対するフットマッサージは, 冷え症状を緩和するケア技法として有用であることが示唆された.
著者
佐伯 由香 田中 裕二
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.76-83, 2003-09-10 (Released:2016-10-25)
参考文献数
48

本研究は速い痛み (pricking pain) の緩和に音楽や芳香療法が有効であるか否か調べることを目的とした. 健康な女性 (n=25) を対象とした. 痛みの客観的な評価として皮膚コンダクタンスならびに皮膚血流量を測定し, 主観的な痛み感覚はVASを用いて評価した. 人為的な痛み刺激は電気刺激を上腕部あるいは前腕部に与えた. 緩和方法として氷嚢を用いて刺激部位を冷やす冷罨法, 湯たんぽを用いて温める温罨法, 音楽を聞いている状態, 香りを嗅いでいる状態で同様の刺激を行い, 反応の大きさを比較検討した. いずれの刺激部位においても温罨法により主観的な痛み感覚ならびに自律神経反応は増強し, 冷罨法により反応や痛み感覚は減少した. 芳香療法や音楽療法は多少緩和効果が認められたが, 冷罨法と比較するとその効果は小さかった. 以上の結果より, 速い痛みを緩和する方法としては冷罨法が最も効果的で, 芳香療法や音楽療法はある程度の期間持続するような痛みに効果が期待できると考えられた.
著者
尾形 優 金子 健太郎 後藤 慶太 河野 かおり 山本 真千子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.227-234, 2017-01-20 (Released:2017-02-07)
参考文献数
26

冷え症において, 冷え症群と非冷え症群とを循環動態指標および自律神経活動指標を用いて比較し, 冷え症の生理学的メカニズムを明らかにすることを目的とした. 対象は若年健常女性20名 (冷え症群12名, 非冷え症群8名) とし, 晩秋 ・ 冬季に測定を実施した. 生理学的指標として, 心拍数 ・ 血圧 ・ 末梢皮膚温 ・ 末梢血流量 ・ 鼓膜温 ・ サーモグラフィ ・ 四肢血圧脈波を用いた. 自律神経活動指標は, 心拍変動を用いて周波数解析を行い, 副交感神経活動指標と交感神経活動指標を求めた. データの分析は両群間を指標ごとに比較 ・ 検討し, 加えて各群における鼓膜温と各末梢皮膚温との差を両群間で比較した. その結果, 冷え症群は非冷え症群にくらべて副交感神経活動指標が低値で, 交感神経活動指標が高値であった. 末梢循環においては, 冷え症群の血流量低下と皮膚温低下も明らかであった. よって, 冷え症者は安静時の副交感神経活動が小さく, 交感神経活動の緊張により安静時すでに末梢の循環機能低下が起きていることを明らかにした.
著者
石井 和美 中田 弘子 小林 宏光 川島 和代
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.17-25, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
14

本研究の目的は, ディスポーザブルタオル (以下, ディスポタオル) を用いた部分清拭が高齢者の皮膚に与える影響を明らかにすることである. 地域在住の65~74歳の高齢者27名を対象に, ディスポタオルと綿タオルを用いて左右の前腕の清拭を実施し, 清拭前後の清浄度, 水分量, pH, 皮膚温を測定した. これらの客観的測定に加えて, タオルの使用感について清拭後に主観的に評価を行った. 結果はディスポタオルによる清拭後の皮膚清浄度は綿タオルと同等で弱酸性を保持していた. ディスポタオルの清拭後15分までの皮膚水分量は高く (P<0.01) , 一方で, ディスポタオルの方が清拭後の皮膚温の低下が大きかった (P<0.01) . 主観的評価ではディスポタオルの「やわらかさ」と「肌触り」に差がみられた (P<0.05) . これらの結果からディスポタオルの清拭においても拭き取り後の気化による熱損失が大きいため, 皮膚上の水分を十分に拭き取る必要があることが示唆された.
著者
佐藤 好恵 藤井 徹也 佐伯 香織 新實 夕香理 篠田 貢一 小澤 由紀 中野 隆
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.91-96, 2009-06-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

殿部筋肉内注射部位である 「四分三分法の点」 および 「クラークの点」 における上殿動脈 ・ 静脈, 上殿神経損傷の危険性について, 実習用遺体 29 体 53 側を対象に形態学的検討を行った. 「四分三分法の点」 は, 皮下組織の直下に大殿筋が分布していた例, および大殿筋の上外側縁部に近接していた例が 24 側 (45. 3%) で認められた. また, この 24 側のうち, 注射針を中殿筋表層まで刺入した場合, 中殿筋表層を走行する上殿動脈 ・ 静脈に近接する例が 10 側 (41. 7%) でみられた. さらに, 「四分三分法の点」 では中殿筋深層まで注射針を刺入した場合, 中殿筋深層を走行する上殿動脈 ・ 静脈, 上殿神経への近接例が 40 側 (76. 9%) でみられ, 「クラークの点」 に比べて 1. 7 倍多かったことから, 神経 ・ 血管損傷の危険性が二重に高いことが示唆された. よって, 大殿筋を貫通する頻度の少ない 「クラークの点」 が, より神経 ・ 血管への注射針刺入の危険性が低い安全な注射部位であることが考えられた.
著者
高橋 信子 山崎 信寿
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.50-57, 2005-04-30 (Released:2016-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

立ち座り動作の困難な女性が, 安楽に立位で排尿できるようにするための女性用便器を開発した. 便器の寸法やデザインは, 身体関節に何らかの苦痛が生じている女性被験者 (20~76歳) 10名の立位排尿実験から外形中央幅22cm, 高さ30cmのピーナツ殻形状とした. 膝関節や股関節に障害のある女性10名について試作便器の検証を行った結果, 一般的な立位姿勢であれば, 下肢および衣服を汚すことや尿が便器の外に飛散することなく, 安楽に排尿できることが確認できた.
著者
北島 万裕子 加悦 美恵 飯野 矢住代
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.48-54, 2012-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
7

本研究の目的は,マスクを着用して発せられる看護師の声が,患者にどのような音として伝わっているかについて,マスク着用時と非着用時で比較し検討することである.対象は女子看護学生12名で,看護師役11名,患者役1名に振り分けた.方法は,検温場面を想定して看護師役の発する音声を録音し,音声分析ソフトPraatを用いて声質と音圧レベルを測定した.患者役には聞き取りやすさ等を調査した.結果,検温の測定内容について患者に話しかける場面ではマスク着用で声質に違いは認められなかったが,体温を測定する動作を伴いながら患者に脈拍数を伝える場面では,マスク着用時のほうがしわがれ声,かすれ声といった聞き取りにくい音声となっていた (p=0.076).6,000~8,000Hzの高音域では7名以上 (63%以上) がマスク非着用時の音圧レベルが高く声が大きくなっていた.患者役は,マスク着用時に「声がこもっている」「声が小さくなった」と感じていた. 以上より,マスク着用時の看護師の音声は,他の動作を伴う際や高音域で話す際に聴こえにくい可能性が示唆された.
著者
住吉 和子 中尾 美幸
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.36-40, 2017 (Released:2017-08-28)
参考文献数
14

女子大生18名 (甘酒群11名, 対照群7名) を対象に, 甘酒の摂取が便秘に及ぼす影響を明らかにするために, 2週間150mLの甘酒を摂取してもらった. 実験は倫理委員会承認後に本人の了解を得たうえで開始した. 効果の評価は, 日本語版便秘評価尺度 (以下MT-CAS), 排便頻度, 便秘の辛さを用いて, 便秘尺度の得点, 排便頻度, 排便の辛さの得点をWilcoxsonの符号付き順位検定を用いて, 甘酒群と対照群をそれぞれ比較した. 排便の頻度は, 甘酒摂取群が有意に改善し (P=0.046), MT-CASの合計得点 (P=0.009), 「便の回数」 (P=0.025) で有意に改善していたが, 排便の辛さは両群に有意な差はみられなかった. 以上の結果から, 1日1回の甘酒の摂取により, 便秘が改善される可能性があることが示唆された.
著者
原田 清美 西田 直子 北原 照代
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.164-173, 2015-08-20 (Released:2016-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は,看護師の看護作業による腰痛への効果的な予防対策を講じるために,腰痛の有無と看護作業との関連を明らかにすることである. 平成24年10月に,A大学病院に勤務する看護師320人を対象とし,無記名自記式質問紙調査を実施した. 調査項目は,腰痛の状況,身体的につらい看護作業,移乗・移動介助方法など計32項目である.腰痛の有無別,ベッドから車椅子への移乗,体位変換やベッド上での移動介助方法の比較には,フィッシャーの直接確率検定を用いた. その結果, 「現在腰痛がある」 と回答した看護師は144人 (54.3%) であった.腰痛あり群は,なし群にくらべ,多くの看護作業が身体的につらいと感じていた.腰痛あり群は,移乗および移動介助を 「一人で実施している」 と回答した割合が高く,移動介助では有意な差を認めた (P =0.012).また両群ともに 「道具を使う」 と回答した看護師の割合は低かった.これらのことにより,移乗・移動介助を一人で行わないことや道具を活用するなどの腰痛予防対策を取り組む必要性が示唆された.
著者
安田 佳永 矢野 理香
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-8, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
26

本研究の目的は, 静脈穿刺における血管怒張手技の怒張効果検証のための実験設計, 測定方法, 実施後の怒張効果に焦点を当て, 血管怒張手技の有効性の研究動向を明らかにすることである. Cooper (1998) の統合的文献レビューの方法を参考に行った. 国内文献は医学中央雑誌web版, 海外文献はCINAHL web版およびPubMedを用いて, 「 (血管AND怒張) AND穿刺」, 「 (血管AND拡張) AND穿刺」, 「 (静脈AND怒張) AND穿刺」, 「 (静脈AND拡張) AND穿刺」をキーワードとし, 文献検索を行った結果, 10件の国内文献と6件の海外文献が分析対象となった. 結果, 80%以上が駆血と温罨法に関する文献だった. 血管怒張手技により, 血管断面積や血管径は大きくなり, 血管の深さは浅くなること, 穿刺成功率は増加し, 針の挿入時間は短縮されることが明らかになった. しかし, 同じ怒張手技でも研究間で実施時間や使用用具などの方法に差異があり, 怒張の程度は異なっていたため, 一概に手技の比較ができないと考えられた.
著者
河合 桃代
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.63-72, 2015-04-20 (Released:2016-04-26)
参考文献数
23

本研究の目的は,看護師と嚥下障害者の身体を介した相互作用に焦点を当てて,食事介助のわざを明らかにすることである.研究方法は質的研究方法で,参与観察法と看護師による嚥下障害者への食事介助場面のビデオ視聴をもとにした対話を用い,質的帰納的に分析した.研究参加者は,経験年数が7年と30年以上の看護師2名と,脳血管疾患の後遺症で嚥下障害を伴う高齢者3名であった.嚥下障害者への食事介助における看護師のわざとして5つのカテゴリー 【食べる構えをつくる】 【舌との触れ合いを待つ】 【舌の動きを補う】 【噛む動きをつくる】 【飲み込みを助ける】 が見い出された.看護師は身体に触れ,客観的には見えない口の中などを視覚的イメージにより理解していた.嚥下障害者の身体の動きを声として受け止め,自身の身体の動きを変えて同調した.さらに,嚥下障害者が自ら身体を動かす機会をつくって食べる意欲を引き出しつつ,身体の動きを補完して支援した.
著者
金子 健太郎 尾形 優 熊谷 英樹 山本 真千子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.4-11, 2012-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

蒸しタオルによる足部への温罨法 (以下,蒸しタオル法とする) の生理学的効果と,既報の足浴による効果とを比較した.若年健常男子 19名 (平均年齢 21.3 ± 3.4歳) を対象に,心拍数と血圧,体表温 ・ 皮膚血流量,心拍変動 (heart rate variability :HRV),圧受容器反射感受性 (baro-reflex sensitivity : BRS) 指標を測定した.蒸しタオル法は,安静臥床位 15分後に,加温 ・ 加湿したフェイスタオルを両足にそれぞれ4枚で 15分間被覆する方法で実施した.各測定値の観察は,蒸しタオル法前から蒸しタオル法後 30分間まで連続して行った.その結果,蒸しタオル法は,全身循環に負荷をかけることなく,末梢循環を促進,維持させ,自律神経活動では,交感神経活動を賦活化させることなく,副交感神経活動を亢進させることが確認できた.また,蒸しタオル法と足浴法を比較した結果,ほとんどのパラメーター間で統計学的に有意差は認められなかった.したがって,蒸しタオル法は少なくとも今回の方法に従えば,足浴に代わる方法として用いることが可能であると考えられた.
著者
吉永 亜子 吉本 照子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.70-77, 2007-05-20 (Released:2016-10-25)
参考文献数
38
被引用文献数
2

足浴は, 頭痛を軽減させ発汗を促進する看護技術として, 19世紀末に英米から導入され実践に適用されてきた. 本研究の目的は, 日本において足浴がどのように睡眠援助の看護技術に進展したかを, その背景要因とともに明らかにすることである. 1877年以降に出版された看護書や基礎看護学教科書など25文献における足浴や睡眠援助の記述内容, 各時代の看護制度, 看護教育, 睡眠に関する他分野の知見を調べた. 足浴技術の国内での進展とその背景要因は, ①看護師が患者の身体面の世話全般を担当したことより, 足の熱布清拭に睡眠効果があることを発見, ②熱布清拭や入浴の睡眠効果から類推して, 湯を用いた足浴の睡眠効果を発見, ③体の深部の体温を意図的に上昇あるいは下降させる足浴方法を, 実験により特定, ④睡眠は深部体温低下期にはじまると基礎医学分野で実証されたのをうけ, 足浴が睡眠をうながす機序と足浴方法を見直したこと, と考えられた.
著者
大﨑 真 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.231-237, 2015 (Released:2016-04-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

点滴による静脈炎発症後の看護ケアとして,症状緩和のために冷罨法が行われているが,冷罨法の目的である炎症抑制効果に関する具体的な検討はなされていない.そこで本研究では,点滴による静脈炎に対し効果的な冷罨法の温度を明らかにすることを目的とし,ラットを用いた実験研究を行った.薬物を投与して実験的にラットの尾部に静脈炎を作製後,薬物注射部位の表面温度を 10℃,15℃,20℃となるよう冷罨法を施行し,罨法を施行しない対照群と肉眼的所見,腫脹について,症状の経過を比較検討した.その結果,腫脹の項目において温度による明らかな差が認められた.したがって,本実験条件下において静脈炎に対する冷罨法の適正温度は 20℃であると考えられた.
著者
後藤 大地 田中 裕二 藤田 水穂
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.19-27, 2013-01-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
10

本研究は,心臓外科手術前後における適切な呼吸訓練のあり方についての知見を深めるため,スーフル®による呼吸訓練に着目し,その訓練が循環動態,自律神経活動,中枢神経活動に及ぼす影響を検討したものである.年齢や既往歴,治療方針の影響を防ぐため健康な成人10名を被験者とし,安静時,呼吸訓練時 (5分間),その後の回復時について循環動態,自律神経活動 (訓練時をのぞく),脳波等を連続的にモニターした.その結果心拍数,血圧変動,大脳皮質活動は,呼吸訓練時において,安静時および回復時,もしくは一方と比して有意に上昇,活性化し,副交感神経活動は訓練終了5分後に比して20分後で有意に低下した (p<0.05).また,心拍数は訓練開始後3分で最大値に達し,回復するのに15~20分を要した.この結果より,今回の呼吸訓練は心負荷を生じること,交感神経活動の興奮および副交感神経活動の抑制を引き起こすこと,大脳皮質を賦活化し,特にα波の発現になんらかの影響を及ぼすこと,さらに術前訓練においては訓練方法を1回につき3分以内にし,15~20分以上の間隔をとったのちに訓練を再開するという方法が適切であると示唆された.
著者
吉永 亜子 吉本 照子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.4-13, 2005-11-10 (Released:2016-10-25)
参考文献数
34
被引用文献数
5

足浴が, どの程度不眠患者の睡眠を促す効果をもつのか, どんな要因が効果に影響するのかを総括するために, 医学中央雑誌, Medline, Cinahlの全年オンライン検索や, 最新看護索引 (1990~2000), 研究報告書, 本, それらの引用文献より, 網羅的に足浴実践報告を集め, 睡眠との関連を報告していた 17件を分析した. 対象者10名以上の報告ではいずれも, 不眠患者の半数以上が足浴による睡眠状況の改善を認め, 入眠しやすさや, 眠りの深さ, 目覚めのよさ等の効果がみられた. 足浴によって皮膚温上昇 ・ 深部体温低下が起こることと, 深部体温低下期に睡眠が起こりやすいことは生理学実験で実証されており, 深部体温の低下が入眠を促し, 深部体温の変動の増幅が持続的な睡眠状況改善をもたらしたと考えられた. しかし, 足浴前の皮膚温が高い場合や, 室温が高い場合, 体の芯まで温めすぎた場合には効果が出にくくなり, これらは深部体温の変動上, 睡眠を阻害する要因と考えられた.