著者
川口 航平 山神 良太 河野 賢一 鹿毛 智文 村上 亮 武冨 修治 田中 栄 乾 洋
出版者
日本関節病学会
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.54-60, 2023 (Released:2023-07-31)
参考文献数
27

はじめに:人工膝関節手術に対しての術後患者立脚型評価が標準化しているが,術後患者立脚型評価には術前の心理的因子が影響すると報告されている。しかしTKA,UKAにおいての術前の心理的因子の違いや術後患者立脚型評価に与える影響の違いなどは明らかではない。本研究の目的はTKAとUKAにおける術前の心理的因子の違いとその心理的因子が術後臨床成績に与える影響の違いを明らかにすることである。方法:2018年10月から2021年3月に当科にて人工膝関節手術を行った症例で,術後1年以上の臨床成績の評価が可能であったTKA192膝とUKA43膝を対象とした。術前心理的因子は痛みに対する中枢性感作の評価スコアであるCSIと破局的思考の評価スコアであるPCSにて評価した。術後患者立脚型評価として術後1年でのKOOS,New Knee Society Scoreを使用した。TKAとUKAでの術前心理的因子の違いと術前心理的因子と術後患者立脚型評価の関連の違いを評価し2群で比較した。結果:術前心理的因子であるCSIはTKA群23.5,UKA群21.5,PCSはTKA群27.3,UKA群26.1とともに両群で有意差はなかった。CSIと術後患者立脚型評価の関係は,TKA群では術後患者立脚型評価のすべての項目で負の相関を示したが,UKA群ではすべての項目と相関がなかった。PCSと術後患者立脚型評価の関係では,TKA群では立脚型評価のすべての項目で負の相関を示したが,UKA群ではKOOSのADLとNew Knee Society Scoreの満足度の項目のみ負の相関を示した。結論:TKAとUKAにおいては術前心理的因子(中枢性感作,破局的思考)には差がなかった。しかしTKAとUKAにおける術前心理的因子(中枢性感作,破局的思考)が術後患者立脚型評価に与える影響の程度は異なっていた。