著者
沼田 明樹
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.341, pp.37-45, 1984-07-30
被引用文献数
2

本実験で明らかになった点を要約する。1)摩擦面処理RおよびSRの摩擦面に繰り返しすべりが生じると, 初すべり時の摩擦係数が広い範囲の値をとる場合でも, 2〜10回の繰り返しすべりにおける摩擦係数は, 狭い範囲の値に集中する傾向がある。2)摩擦面処理Sの摩擦面に繰り返しすべりが生じると, 数回の繰り返しすべりによって摩擦係数が急上昇し, 0.75程度の高い値となる。3)摩擦面処理Rの場合, 荷重周波数が大きい程, 繰り返しすべり後の摩擦係数は小さい値をとる傾向がある。従って, 準静的載荷実験の結果が, 実際の動的な現象に対して危険側の評価を与える場合がある。4)摩擦面処理Rの場合, ボルト軸力低下量が導入ボルト軸力の20%程度までであれば, 摩擦係数変動特性はボルト軸力低下の影響をほとんど受けず, また, ボルト軸力を一定に保持した条件の場合, 本実験の範囲では, ボルト軸力の大きさは摩擦係数変動特性に影響を及ぼさない。5)摩擦面処理SRの場合, 摩擦係数変動特性に及ぼす荷重周波数およびボルト軸力の影響には, 本実験の範囲では, 摩擦面処理Rの場合との著しい矛盾は認められない。6)繰り返しすべりを生じる高力ボルト摩擦接合部の復元力特性を, 実用上ほぼ妥当な精度で定量的に把握することを目的とした場合の, 摩擦係数の評価方法を提案し, その妥当性を示した。