著者
泉野 淳子
出版者
心の諸問題考究会
雑誌
心の諸問題論叢 (ISSN:13496905)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-26, 2009 (Released:2009-07-14)
参考文献数
18

本報告は、約10年前「人間性心理学研究」に投稿して審査を受けた際の体験を一事例としてまとめたものである。その審査のあり方は首を傾げたくなるようなものだった。審査者たちの評価基準は投稿論文審査内規に沿った一貫性あるものとは思われず、一人の審査所見には明白な誤りさえ含まれていた。論文は、戦後日本の教育界や臨床心理学界に多大な影響を与えたC.R.ロジャーズとキリスト教の関係を論じたものであった。その主張はおそらく日本のロジャーリアンの主流の見解に合わないものだったのであろう。ある審査者は内容を理解しかねているようであった。このような過去のことを今になって取り上げる理由の一つは、時間を経たことによって冷静に自分の論文および審査所見を読み、客観的に吟味できるようになったためである。うまく機能しなかった実例を検討することは、審査制度を改善していくためにも大切なことであると考える。