著者
倉橋 知英 法水 淳 三宅 崇之 早田 菜保子 岡本 明之 青地 一樹 平尾 元宏 山田 拓哉 平松 直樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.437-444, 2023-09-01 (Released:2023-09-11)
参考文献数
13

症例は80代男性.発熱・咳嗽を主訴に前医を受診,肺炎と診断され抗菌薬投与を開始されたが,肝酵素上昇を認め紹介となった.血液検査でMPO-ANCA陽性であった.腹部エコー検査で肝動脈内血栓を認め,肝動脈虚血による急性肝障害と診断した.第7病日に収縮期血圧70 mmHg台と急激な低下を認め,造影CTで肝周囲に血腫,多発肝動脈瘤,右肝動脈瘤周囲の高吸収域の出現から,肝動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断した.腹部血管造影で明らかな出血源は同定できず経過観察とした.第30病日,喀血と呼吸状態の増悪があり,胸部CTで肺胞出血によるびまん性のすりガラス影を認め,ANCA関連血管炎(AAV)と診断した.ステロイドパルス療法にて症状は改善し,肝動脈瘤及び肺胞からの出血の再発なく退院となった.AAVは主に小血管を障害するが,肝動脈等の中型血管も障害をおこすことがあり,稀に肝動脈瘤の原因となりうるため注意を要すると考えられた.