著者
谷 一郎 糸川 英夫 泰磨 増雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.13, no.158, pp.116-145, 1937-11

主翼の地面效果に關しては,既に報告156號に於て理論的並に實驗的研究を報告した.この論文はその續報として,飛行機全體の空氣力學的性質に及ぼす地面の影響を取扱つたものである.フラップをつけた低翼單葉機の模型に就いて風洞實驗を行つた結果,揚力及び抵抗に關する地面效果は前報告の主翼單獨の場合と略同樣であるが,重心周りの縱搖れモーメントが地面の影響を受けて著しく頭重になることが知られた.これは主として水平尾翼に於ける吹下しが減少することに因るものである.場合によつては,このことは昇降舵の設計に當つて考慮すべき重要な條件となるものと思はれる.尚上記の地面效果は,理論的計算によつて實用上十分正確に之を推定することが出來る.ただ計算の一つの欠陷として,フラップ操作時の揚力の地面效果を幾分小さく見積る傾向がある樣である.尤もこのことは縱搖れモーメントの値には極めて僅かしか影響を及ぼさない.