著者
藏前 哲郎 石川 真悟 林 淳 津曲 圭太 乙丸 孝之介 帆保 誠二
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.31-36, 2020-01-20 (Released:2020-02-20)
参考文献数
15

本研究では,臨床的に重症慢性肺炎と診断された黒毛和種牛50頭から鼻咽頭スワブ(Swab)及び気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し,細菌分離とともに,その薬剤感受性を調査した.Swab及びBALFからはおもにMycoplasma bovis 及びPasteurella multocida が分離されたが,同一牛において両検体から同一細菌種が分離された割合は比較的低かった.また,BALFから分離されたM. bovis 及びP. multocida は,おもにフルオロキノロン系抗菌薬に感受性であったが,Swabから分離された同2菌種の同系抗菌薬に対する薬剤感受性は低かった.以上より,重症慢性肺炎罹患牛の鼻咽頭領域及び気管支肺胞領域からは,おもにM. bovis 及びP. multocida が分離されるが,同一供試牛から分離された同一菌種の細菌であっても,薬剤感受性が異なる可能性があることから,重症慢性肺炎罹患牛においてSwabによる肺炎原因菌の推定には慎重を要すると思われた.