- 著者
-
津田 祥美
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
エボラウイルスの主要標的細胞はマクロファージや樹状細胞であるとされているが、エボラウイルスが感染した宿主体内で実際にマクロファージや樹状細胞でどのように増殖しているのか、また致死的病態にどのように関与しているのかは未だ不明である。本課題ではエボラウイルス病の病原性発現メカニズムを明らかにするために、エボラウイルスの初期標的細胞を同定し、病態形成に重要な宿主応答を解明することを目的とした。これまでの研究において作出したマクロファージや樹状細胞特異的に増殖が抑制された組換えウイルスと親株となるマウスに致死的病原性を示すマウス順化株をマウスに腹腔内感染した。感染初期における腹腔内細胞の解析により、感染1日後から少ないものの感染細胞が検出された。感染3日後、5日後には感染は腹腔内細胞から全身臓器に広がっていた。感染細胞をフローサイトメトリー等を用いて解析した結果、その多くがF4/80陽性のマクロファージ細胞であることがわかった。一方で、マクロファージや樹状細胞特異的に増殖が抑制された組換えウイルスの腹腔内でのウイルス増殖は親株に比較して増殖が抑制されていることが確認された。臓器におけるウイルス増殖を比較したところ、マクロファージや樹状細胞特異的に増殖が抑制された組換えウイルスは親株と比較して明らかに減弱したウイルス増殖が確認された。すなわち、エボラウイルスはマクロファージ系細胞に非常に感受性が高く、マウス腹腔内に摂取されたエボラウイルスは腹腔内でマクロファージで増殖することで効率よく全身臓器に伝播していくことが示唆された。