著者
津田 雅夫
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.341-359, 2008-09-30

宗教批判の概念は独自の背景的な思想史的文脈のなかに成り立つ。日本思想において宗教批判の構想が、いかなる意味で成り立ちうるのか。本稿において私は宗教批判の概念を明らかにしようと試みた。そして独自の思想伝統を探るべく、まず三木清の宗教批判が「日本近代」へのラディカルな問いかけ(疑惑)に基づくものであったことを、戦前期日本の思想的到達点として確認し、その関連で近代啓蒙の遺産としてのマルクス主義と精神分析による宗教批判を取り上げ、遺産継承の仕方について考えた。最後に現代宗教批判の焦点として、「日常性の宗教」としての「国民(市民)宗教」を取り上げ、そのラディカルな批判の可能性について、「無」と「自然」の二つの概念が孕む両義性に着目しながら考察した。