著者
河本 夏雄 津田 麻衣 岡田 英二 飯塚 哲也 桑原 伸夫 瀬筒 秀樹 田部井 豊
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.2_171-2_179, 2014 (Released:2014-11-03)
参考文献数
20

養蚕業の振興とカイコを用いた新産業創出のため,蛍光を発するなど付加価値の高い絹糸を生産する遺伝子組換えカイコの開発が進められている。遺伝子組換えカイコを養蚕農家で飼育するための第一種使用規程の承認を得るには,生物多様性への影響が高まることがないことを示す必要がある。カイコは本来,野外で自立的に生存・繁殖することはないが,近縁野生種であるクワコとの交雑による影響を考慮することが求められる。養蚕農家でカイコが屋外に出るのは飼育残渣に幼虫が混入する場合であり,それを想定して屋外にカイコを放飼したところ,鳥類やアリ類等による捕食を受けることにより,交雑可能な成虫が生じることがないことが明らかになった。また,遺伝子組換えカイコの行動特性の評価として,幼虫の行動範囲と雌成虫の産卵範囲を調査する手法を開発した。有害物質の産生性については,遺伝子組換え植物での事例に準じた手法を適用してその有効性を示した。以上のことにより,遺伝子組換えカイコの生物多様性影響を評価する手法が構築された。