著者
山本 俊雄 間瀬 啓介 長坂 幸吉 岡田 英二 伊坪 友子 宮島 たか子 榎島 守利 熊井 敏夫 和泉 清二
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.125-132, 1999-04-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
7 7

高付加価値化・差別化できる絹の新素材開発を目的として, 極細繊度蚕品種「中514号×中515号, 愛称: はくぎん」を育成した。中514号は2化, 広食性の斑紋限性品種であり, 繊度は1.8~1.9dである。中515号は1化性で繊度は1.5d以下になる。また, 両原種とも支25号の血縁度が高く, 近交係数は中514号が47%, 中515号が100%である。「はくぎん」は1998年1月に特徴ある蚕品種として指定された。幼虫の体色は青系, 斑紋は形蚕, 繭色は白色, 繭形は楕円形であり, ちぢらは普通である。「しんあけぼの」に比べて飼育日数は全齢で約1日短く, 収繭量, 繭重, 繭層重などの計量形質は約8割の水準にある。繊度は1.65dと極細で4眠蚕品種としては初めての2d以下の品種である。繊度偏差も著しく小さいので, 極細の高級生糸の生産が可能となり, 新しい絹製品の開発に利用されることが期待される。
著者
河本 夏雄 津田 麻衣 岡田 英二 飯塚 哲也 桑原 伸夫 瀬筒 秀樹 田部井 豊
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.2_171-2_179, 2014 (Released:2014-11-03)
参考文献数
20

養蚕業の振興とカイコを用いた新産業創出のため,蛍光を発するなど付加価値の高い絹糸を生産する遺伝子組換えカイコの開発が進められている。遺伝子組換えカイコを養蚕農家で飼育するための第一種使用規程の承認を得るには,生物多様性への影響が高まることがないことを示す必要がある。カイコは本来,野外で自立的に生存・繁殖することはないが,近縁野生種であるクワコとの交雑による影響を考慮することが求められる。養蚕農家でカイコが屋外に出るのは飼育残渣に幼虫が混入する場合であり,それを想定して屋外にカイコを放飼したところ,鳥類やアリ類等による捕食を受けることにより,交雑可能な成虫が生じることがないことが明らかになった。また,遺伝子組換えカイコの行動特性の評価として,幼虫の行動範囲と雌成虫の産卵範囲を調査する手法を開発した。有害物質の産生性については,遺伝子組換え植物での事例に準じた手法を適用してその有効性を示した。以上のことにより,遺伝子組換えカイコの生物多様性影響を評価する手法が構築された。