著者
佐藤 毅 佐藤 卓巳 川浦 康至 市川 孝一 津金沢 聡広
出版者
一橋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

本研究は情報化が大衆文化のありかたにどのような変容をもたらしつつあるかを明らかにしようとしたものである。この研究の初年度にあたる本年度は、先行研究の収集とその分析を試みつつ、研究の粋組づくりと、若干の個別研究にふみこんだ。研究に大別して二つに分れて行なわれた。その第1は、関東グル-プによって行われた「ヴィデオゲ-ム」を事例にとった研究である。ここではまず研究の粋組づくりが行われ、“人ーメディア相互行為"の位置づけを試みた。すなわち、メディア内世界での人々のメディア依存の深化と高度化が、同時に、そこでの経験の自在感や自律性を高めることを指摘した。次に先行研究を国内と国外に分けてレビュ-し、また新聞と雑誌の記事の分析を通じて、ヴィデオゲ-ムをとりまく、論調の分析を行った。そこでは新しいソフトの開発がきっかけで論調の量と内容に変化が生まれていることがわかった。さらに、来年度の継続研究として、事例調査とアンケ-ト調査に着手している。第2は、関西グル-プによる、「カラオケ」を事例とする研究である。ここではまず家庭における情報・メディア機器の利用実態調査をふまえて、カラオケ歌唱行動やカラオケ文化の変容と類型化の試み、そのメディア社会史の分析などを行った。ここでは、カラオケ文化が高度情報化時代の産業的=技術的基盤の上に成立した現象であること、テ-プ・カラオケからLDカラオケへの移行のなかで、ナイト文化、ボックス文化、ワゴン文化、ホ-ム文化と四つの類型に分けられるに至っていること、そしてそれぞれに人々の仮想の「生きがい」が発散されていることが見出された。なお、本研究の詳細は別冊「情報化と大衆文化ー実績報告書」を参照されたい。