- 著者
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荘 秀美
洪 春旬
- 出版者
- 西日本社会学会
- 雑誌
- 西日本社会学会年報 (ISSN:1348155X)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.61-71, 2018 (Released:2019-05-21)
- 参考文献数
- 20
台湾では、地域密着型福祉が1990年代初期から導入され、高齢者介護政策に大きく影響した。2016年5月の政権交代で、「長期介護十ヵ年計画2.0」を施行すると宣言した。その中で、「ABC 計画」という施策が提出され、「地域包括ケア」の政策方向を明示した。本論文では、「地域包括ケア」施策として「ABC 計画」のサービス対象、範囲及び推進戦略、政府の役割と機能、民間団体の位置、参入団体間の関係などを明らかにし、その可能性はどうなるのか、その促進要因と阻害要因は何かなどについて分析する。そこで、「地域包括ケア」という「ABC 計画」が追求している目標は明確に定義されておらず、「地域包括(統合型地域介護)」といえば、何を統合するか(対象不明)、どこまで統合するか(範囲不明)、如何に統合するか(推進方法混乱)、統合する条件は何か(財源―コスト、人力などの環境条件)、政府の役割や機能は何か、介護福祉提供者などの民間団体の位置、能力、相互関係などはどうなっているか、など様々な問題が指摘されていた。台湾では、地域包括ケアが導入されたとしても、その限界がどれほど認識されるかは問題である。また、上述した課題のほかに、サービスレベルの地域格差の問題、持続的財源の問題、サービス拠点の拡充など解決しなければならない問題が山積している。いずれにしろ、短期的には、その実現可能性は厳しいと思われる。