著者
浅井 昭博
出版者
愛知学院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

歯周病の原因である細菌は、Porphyromonas gingivalis, Actinomyces viscosus等の嫌気性細菌が有力とされているが、従来の方法による細菌採取では、歯周ポケットに限局した採取とならざるを得なかった。外科療法は歯周治療に占めるウエートは大きいが、歯周外科処置の細菌学的考察は困難とされていた。歯周病の発症や進行の機序解明に関する分野において、歯周ポケットのみならず、ポケット以外の歯周組織への細菌の侵入による局在の様子を明らかにし、実際に歯周病関連菌の侵入を受けている歯肉組織を歯周外科処置にて除去し得ているか、in situ Hybridization(ISH)法を含めて細菌学的に観察をすることを目的とした。歯周外科処置により除去した歯周組織を標本とし、P. gingivalisのFim遺伝子の約0.96kbp HincII-BsmI断片DNAプローベをもとに、従来検出不可能あるいは極めて困難であった歯周組織内への細菌の侵入、局在の様子を観察する方法を得た。その有効性を検証するために、歯周ポケット内においては従来の培養法を用い、歯周外科療法の効果実証を行った。細菌検査は歯周外科処置前後および対照菌について実施し、併せて臨床効果判定を行った。現在、歯周外科処置時に標本を採取することにより、P. gingivalisが歯周ポケット内のみに限局せず、歯周組織内に広範に侵入していることを明らかにしつつある。また、各種歯周病関連菌に対する培養法による結果を基に薬剤投与法の検討を行い、Local Drug Delivery System応用による塩酸ミノサイクリンの歯周局所への投与の有効性を細菌学的・臨床的に実証し、塩酸ミノサイクリンを含有したストリップスタイプ歯周病薬「SDP」を開発し、発表した。今後、“Checkerboard"DNA-DNA Hybridizationを行い、観察可能な歯周病関連菌の菌種を増やす予定である。