著者
浦松 雅史 斉田 芳久 長尾 二郎 渡邉 学 岡本 康 中村 陽一 榎本 俊行 浅井 浩司 桐林 孝治 草地 信也
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.29-33, 2012 (Released:2013-02-25)
参考文献数
2

【緒言】同意書は私文書であるので,署名があれば押印がなくても文書の真正を推認する点で差はない.押印欄廃止に向けて,押印の必要性についての意識を調査した.【方法】医師,看護師,患者に,同意書に関する意識等を尋ね,押印の法的意義を説明した後,意識の変化を調査した.【結果】外科医24名,看護師35名,患者20名から回答を得た.同意書押印欄の不備を経験した外科医は8名33%,看護師は18名51%であった.対処方法は,両群とも患者拇印が最多で,患者押印,家族押印が続いた.法的説明後は,同意書には署名のみ必要と考える者が増加した.医療従事者では,押印を廃止すべきとの意見が増加したが,患者では病院次第であるとの考えが多かった.【結語】同意書での押印要求は,法的に不要なだけでなく,拇印の半強制などの不適切な事項の原因になる.廃止について患者の不安の増強もなく,同意書の押印欄廃止を早急に図るべきである.
著者
渡邉 学 長尾 二郎 田中 英則 浅井 浩司 大沢 晃弘 松清 大 草地 信也 斉田 芳久 炭山 嘉伸
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.537-541, 2009-03-31 (Released:2009-05-12)
参考文献数
16

症例:77歳男性。C型肝炎,肝硬変,多発性肝細胞癌の診断にてTACE(transcatheter arterial chemoembolization)を施行されている。TACE施行7ヵ月後上腹痛を訴え緊急入院。ショック状態・著明な貧血を認め,腹部CT検査・腹水穿刺より肝細胞癌による肝破裂の診断にて緊急血管造影施行,外側区域腫瘍の腫瘍濃染,血管外漏出像を認め選択的にTAE(transcatheter arterial embolization)施行し止血した。その後経過良好にて退院となったが,TAE施行3ヵ月後再度急激な腹痛出現。前回同様ショック状態・貧血を認め,再度肝細胞癌の破裂による腹腔内出血を疑った。緊急血管造影にて肝S6腫瘍の腫瘍濃染認め,そこからの出血と考え選択的にTAE施行し止血した。2度の出血はそれぞれ異なる部位の肝腫瘍からの破裂であったが,迅速な対処による緊急腹部血管造影検査による診断およびTAEによる止血術は非常に有効であり,救命することができた。