著者
炭山 嘉伸
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.121-125, 1997-01-01
参考文献数
6
被引用文献数
11

臨床材料や腸管内から分離される細菌は, 偏性嫌気性菌, 通性嫌気性菌, 偏性好気性菌の3つに大別される. 腸管内は嫌気状態が保たれ, 腸内細菌叢のほとんどは嫌気性菌である. そして, 腸内細菌は相互間のバランスで病原菌の以上増殖を抑え, IgA 抗体産生, マクロファージの遊走能の賦活, などの作用を持ち, 感染防御機構の一端を担っている. しかし, 腸内細菌は術後感染, 日和見感染や bacterial translocation の原因となりうる. このように, 腸内細菌は生体にとって, メリットとデメリットの両面を持っているといえる. 一方, 腸内細菌叢に変動を来す因子はさまざまであり, 外科領域では H2 receptor antagonists, 胃切除, 抗菌薬の投与, total parenteral nutrition (以下, TRN) などが重要である. 消化器外科領域では術後感染予防の抗菌薬の投与は不可欠である. したがって, 抗菌薬の使用に当たっては, そのメリットとデメリットを十分考慮する必要がある.
著者
渡邉 学 長尾 二郎 田中 英則 浅井 浩司 大沢 晃弘 松清 大 草地 信也 斉田 芳久 炭山 嘉伸
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.537-541, 2009-03-31 (Released:2009-05-12)
参考文献数
16

症例:77歳男性。C型肝炎,肝硬変,多発性肝細胞癌の診断にてTACE(transcatheter arterial chemoembolization)を施行されている。TACE施行7ヵ月後上腹痛を訴え緊急入院。ショック状態・著明な貧血を認め,腹部CT検査・腹水穿刺より肝細胞癌による肝破裂の診断にて緊急血管造影施行,外側区域腫瘍の腫瘍濃染,血管外漏出像を認め選択的にTAE(transcatheter arterial embolization)施行し止血した。その後経過良好にて退院となったが,TAE施行3ヵ月後再度急激な腹痛出現。前回同様ショック状態・貧血を認め,再度肝細胞癌の破裂による腹腔内出血を疑った。緊急血管造影にて肝S6腫瘍の腫瘍濃染認め,そこからの出血と考え選択的にTAE施行し止血した。2度の出血はそれぞれ異なる部位の肝腫瘍からの破裂であったが,迅速な対処による緊急腹部血管造影検査による診断およびTAEによる止血術は非常に有効であり,救命することができた。
著者
斉田 芳久 炭山 嘉伸 長尾 二郎 高瀬 真
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1077-1082, 1999-10-01
被引用文献数
14 1

大腸疾患に対するステント治療は, その屈曲の強さや壁の薄さなどの解剖学的特徴から他の消化管におくれて1990年代後半からようやく臨床応用が報告されてきている.本稿ではその歴史, 内容を紹介するとともに, われわれの開発したSECC (Stent Endoprosthesis for Colorectal Cancer) についての紹介と成績の報告をする.SECCは, われわれが1993年11月に開発した通過障害を伴った全周性狭窄型左側大腸癌に対しては, 透視下および大腸内視鏡下に金属ステントを挿入し拡張内瘻化する手技で, 現在までに33例にSECCを施行し, 27例82%に挿入可能であった.イレウス発症時は待機手術が可能となり術後手術成績の向上が期待できた.本法は, 他の減圧処置に比較して管理の容易さと患者の身体的, 精神的負担が少なく, 今後の専用キットの開発により大腸癌による狭窄・閉塞に対する第一選択的な手技となり, 大腸の治療内視鏡の一つとして普及していくと思われる.