著者
加藤 美奈子 浅井 琢美 荻 紗綾 杉本 学 荒木 悠里 高橋 立夫 須崎 法幸
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.57-61, 2022 (Released:2022-09-20)
参考文献数
16

【目的】全身麻酔中の保温は,全身合併症の予防に重要であるが,これまで破裂脳動脈瘤コイル塞栓術中に体温が低下する経験をした.今回保温目的で導入した,アルミ薄膜付きの覆布(以下,サンステート)の体温低下予防効果につき,後ろ向きに検討した.【方法】2017年5月から2018年6月の期間に,全身麻酔下で緊急コイル塞栓術を受けた患者50名のうち,来院時心肺停止,入室前38.0°C以上の発熱例,来院から24時間以降に治療を開始した例を除いた33名を対象とした.サンステートを導入前後で2群(導入前=A群,後=B群)に分け,BMI, 血管撮影室入室時体温,退室時体温,治療時間について比較検討した.【結果】対象例はA群14例,B群19例であり,年齢(58.4歳vs 57.8歳),性別(女性:78.6% vs 63.2%),BMI(22.6 kg/m2 vs 23.2 kg/m2), 入室時体温(35.3°C vs 35.5°C),治療時間(169分vs 190分)については両群に差はみられなかった.退室時体温はB群で有意に高く(35.5°C vs 36.1°C, p=0.04),体温低下例はB群で有意に少なかった(43% vs 5%, p=0.03).【結論】サンステートの導入により,全身麻酔下における破裂脳動脈瘤コイル塞栓術中の体温低下を予防する効果が確認された.覆布の使用は,血管内治療時の体温低下予防に有用であることが示唆された.