著者
浅原 (佐藤) 哲子
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10, pp.365-370, 2010 (Released:2013-06-01)
参考文献数
31
被引用文献数
1

最近の疫学研究により, 飽和脂肪酸摂取やトランス型脂肪酸摂取が, 虚血性心疾患のリスクを有意に高めることが報告されている。飽和脂肪酸を含む遊離脂肪酸はその脂肪毒性により, 全身のインスリン抵抗性, 糖脂質代謝や肥満を悪化させ, 炎症・動脈硬化など心血管病リスクを促進する。一方, 不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸の炎症惹起作用を減弱しうる。今後, 摂取脂肪量のみならず, 脂肪の質, つまり飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比に着目した食事指導・脂質管理が虚血性心疾患の予防に有効であると考えられる。さらに近年, 個々の脂肪酸の研究とともに, 脂質やその代謝物の網羅的解析 (リピドミクス) の重要性も注目されている。