著者
浅岡 俊之
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.407-412, 2007-05-20

今から30年ほど前に漢方薬は保険収載され,徐々に医師により処方される一般的な薬剤のひとつとなった.しかしながら保険収載された当時,あるいは現在も医師の殆どは東洋医学に対する認識が薄く,全くその内容を知らないことも稀ではない.そのような環境は臨床家に漢方治療の価値を考えるための材料を提供してはいない.漢方薬は本来,東洋医学の治療方法のひとつとして成立していたものであり,その使用根拠,適応,禁忌などは東洋医学の論理で理解されるべきものであるが,現状はそれとは異なった状況にあり,西洋医学にその根拠を求めようとしている.この現状がもたらされた理由を歴史的背景から理解することは非常に重要である.なぜかといえば,それは漢方治療を行うことの意味や価値を教えるからである.