著者
浅川 麻美
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

う蝕病原性細菌の母子伝播について、妊産婦とその出生児間における機序を明らかにするために、まず母子間におけるう蝕病原性細菌の遺伝子学的相同性について検討した。対象は、岩手医科大学歯科医療センター小児歯科外来を受診している小児患者と、その母親とし、対象の児と母親の口腔内より滅菌器具にてプラークを採取し、試料とした。それらを生理食塩水にて、洗浄後、段階希釈を行い、バストラシン添加ミティスサリバリウス寒天培地(MSB寒天培地)にて37℃嫌気下にて48時間培養を行った。MSB寒天培地より採取したコロニーは、生化学的同定法およびPCR法にて菌種同定を行った。同定したS.mutansとS.sobrinusの分離株はトドヒューイット液体培地にて18時間培養し、増菌して菌液を調整した。その後菌液を低融点アガロースゲルに混和し、泳動用プラグを作成して、パルスフィールド電気泳動(PFGE)による解析を行った。プラグはlysozymeにで溶菌し、proteinaseKにで処理後、Sma Iにで制限酵素処理を行った。泳動条件は、switching time1.0〜3.0sec、pulse angle 120°electrophoresis 6v/cm、temperature 14℃とし、18時間泳動を行った。泳動後はエチジウムブロマイド溶液にて染色し、紫外線照射下にて観察を行った。本条件にて泳動を行った結果、明瞭にDNAのバンドパターンを観察することができ、遺伝子型の相同性の解析が可能であると考えた。今後は、母子間においてPFGEによる遺伝子型相同性の解析を行い、同時に口腔内におけるう蝕病原性細菌数、う蝕罹患率、生活習慣等を調査し、伝播形式とその菌株のう蝕罹患傾向との関連について検討していく予定である。