著者
田中 陽登 馬場 光希 浜島 悠哉
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

研究背景・目的本校天文気象部では、約70年前より百葉箱による気象観測(1日2回、気温・気圧・湿度・風速・雨量・視程観測等)が続けられてきた。1995年以降は欠測が増えたが、2007年には自動観測装置を導入し、視程以外の観測を再開させた。2018年には目視による視程観測を再開したが、毎日同じ時間に屋上に出て観測することが難しく、過去に比較して欠測が非常に増えた。本研究では、この問題を解決するために、コンピュータ制御したカメラで定時に対象を撮影することによる新たな観測方法を開発した。カメラを使うことで観測者の視力の影響を無くすことも可能となる。自動観測装置の製作・設置都心方面のより多くの目標物を見渡せる場所として5回の屋上を選択し、手すりに土台を取り付けて観測装置を固定した。容器は粉塵や風雨から機器を守るためにアルミシートで覆った密閉型のケースを作り、電源供給のため屋外用の電源コードとLANケーブルを室内から繋げるよう工作した。観測装置は、一眼レフカメラと、カメラを制御するためのRaspberry Piで構成した。プログラムは、定時に写真を撮影し、撮影画像を自動的にGoogleドライブにアップロードする命令をPythonで記述した。さらに、スマートフォンによる操作で撮影ができるようにし、その時の空の様子や視程の具合を確認できるよう、Slackを通じて観測装置をコントロールするプログラムも作成した。観測方法と結果観測を自動で行うために、カメラの適正な露出や感度など、撮影する際の設定をあらかじめ決める必要がある。同一のタイミングで撮影設定の異なる数枚の写真を撮り、露出が適正である写真を選ぶ作業を繰り返して、設定を決めた。焦点距離は150mmに固定し、1回の観測で3種類の撮影設定を定めた。36㎞先のスカイツリーや25㎞先の新宿のビル群について、同時刻の目視観測の結果とカメラの撮影画像の結果を比較したところ、目視観測で視認できたものは3種の撮影画像でも確認でき、目視とカメラで観測結果に差はないことがわかった。目視と画像にょる識別の差については更に観測を増やして検討する必要がある。考察今回の自動観測で得られたデータと先行研究の1950~60年代の同時期(冬)のデータと比較してみると、現在のほうが、格段に視程がよくなっている。かつては視程が4km未満の日が多くあり、先行研究では冬の朝もやや大気汚染が視程の悪さの要因となっていると言及していたが、現在は天気により視程が悪い時でも4km先まで見通せており、朝もやが出現することはほとんどなかった。今後は更に、視程と天候、及び季節、黄砂や大気汚染との関係をより詳しく調査していく。