著者
浜田 吉治郎 中山 厚生
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学健康スポーツ教育センター研究紀要 (ISSN:1349175X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-14, 2004-03-25
被引用文献数
1

テニスのシングルスにおけるプレースタイルについて、現在の基調と理想に関するプレーヤー自身の意識を把握しようと考えて調査を行い、主として次の結果を得た。1.理想のプレースタイルは、「オールラウンド-攻守量面型」で、「理想の41%が実行成就可能」という意識を持っていた。2.ゲームの中では、精神面、技術・体力面、頭脳面の順に意識が強く現れ、一流選手の条件として知的側面のトレーニングの必要性に示唆をえた。テニスのシングルスにおけるプレースタイルに関する学生男子プレーヤーの意識乃至は認識について、自身の考える理想のプレースタイル、現在の完成度、将来の実行成就の可能性などに対する意識を捉えようと考えた。今回、主として、男子学生のプレースタイルの現状および将来の実行成就度を中心に、プレーヤー自身の意識調査を行い、考察した結果を次に要約した。1.勝利のために身につけている要素と欠けている要素を通して、また、理想との比較を通して得られた結果から、勝敗のための要素は、共通して「技術面・体力面」を中核に、「精神面」が最も多く意識され、「頭脳面」の要素の意識が少ないことがわかった。2.現在のプレースタイルについては、本戦選手では「オールラウンド-攻撃型」、予選選手では「ベースライン-守備型」と、自覚しているプレーヤーが多かった。3.プレーヤー自身が考える「理想のプレースタイル」については、歴史的に仮説として考えられた「サービス・ネットプレー-攻撃型」の指向も存在するが、「オールラウンド-攻守両面型」を考えている傾向が最も強く表れた。4.「理想」に対する実行成就についての意識としては、現在の実行成就度が40%以下と考えているプレーヤーが約3分の1(37%)いるが、将来は全てのプレーヤーがそれ以上に出来ると考えている。すなわち、学生男子のプレーヤーは、全員が、将来、「理想のプレースタイル」に対して約50%以上の度合いで実行できると考え、高いレベルへの上昇を確信する意識があった。このように1学生男子のテニスプレーヤーにおいては、毎日トレーニングを行って技術レベルの高さを保ち、技術・体力を中心に精神面に対する意識の高さを保ちながら、一方では、頭脳面に対する意識はいくらか低く狭い傾向が垣間見える中で、他方では、全ての面の要素を含んだテニスのオールラウンド性に直面している様子がみられた。すなわち、オールラウンドな要素が必要な中で、低調を示す知的側面における理解とトレーニングを、さらに深く広く促進することが、特に一流選手の間に必要と読みとることが出来る。筆者は、長年にわたって、テニスの知的側面の重要性を主張してきたが、いみじくもこの傾向を通して適切さが現され、若い学生プレーヤーの課題として示唆を得た。