著者
谷口 勝彦 浦上 美鈴 高中 紘一郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.97-103, 1987
被引用文献数
10

各種抗アレルギー系薬物の多形核白血球(PMNs)におけるアラキドン酸遊離活性,スーパーオキサイドァニオン(O<SUB>2</SUB><SUP>-</SUP>)産生能に及ぼす薬物の阻害効果を検討した.formyl-methionyl-leucyl-phenylalanine(FMLP)刺激によるPMNsからのアラキドン酸遊離に,20μMの濃度でazelastineとclemastineは約50%の阻害を示し,50μMの濃度でほぼ100%の阻害を示した.他方,cromoglycate,chlorpheniramine,diphenhydramineは50μMまでの濃度では50%以上の阻害作用は示さなかった.O<SUB>2</SUB><SUP>-</SUP>産生能に対する効果は,上記の薬物ではほぼアラキドン酸遊離阻害作用と平行的な相関性を示したが,ketotifenはこれらの薬物の中間的な作用様式を示し,アラキドン酸遊離は50μMで50%以上を抑制したが,O<SUB>2</SUB><SUP>-</SUP>産生能にはほとんど影響しなかった.これら薬物の細胞毒性をトリパンブルー試験法により検討をおこなった結果,いずれも50μMまでの濃度では有意な障害性を示さなかった.これらの実験結果から,抗アレルギー系薬物の中で化学伝達物質遊離阻害薬として知られるazelastine及びヒスタミン(H<SUB>1</SUB>)受容体遮断薬として分類されるclemastineは,低濃度で細胞を傷害する事なくPMNsの機能を抑制し,アラキドン酸カスケードの第一段階を阻害することにより抗アレルギー効果の重要な一端を担っていることが.示唆された.