著者
前田 博之 森 千恵子 山田 英清 浦木 増太郎 湯浅 亮 森 貫一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.339-344, 1988-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
16

現在, わが国において一般的に用いられている各種と殺方式, とくにと豚をけい留場から電殺室へ移動する手段が, 肉質に及ぼす影響について検討した. その結果, (1) と豚の狂騒による騒音とPSEやDFDなどの “生理的異常肉” の発生を示唆する早期温体硬直と体の発現率は, 誘導路・V字型レストレーナー方式から動床コンベアー方式に変更することにより著しく低下した.(2) 放血の良否を示す筋肉内残留血液量は, レストレーナー方式に比べて, 他のと殺方式で低かった.(3) と殺前の興奮と筋運動を反映すると殺後10分の枝肉の温度は, レストレーナ.方式に比べて動床方式で低かった.これは, 血液中乳酸量でも裏付けられた.(4) 死後解糖の亢進の程度を示す枝肉のpHは, 動床方式に比べてレストレーナー方式と実験的CO2麻酔と殺で急激に低下した. このことは, 筋肉内グリコーゲンの減少率や, 筋肉内乳酸量でも裏付けられた.(5) 死後硬直の発現と関連する筋肉内ATP関連化合物は, 動床方式と打額と殺に比べてレストレーナー方式と実験的CO2麻酔と殺で分解傾向にあった. これは, R値でも同様であった. これらの調査研究により, 現行と殺方式としては動床コンベアー方式が優れていることが示された. なお, と豚に対するストレスを少なくし, 肉質の向上や血液の有効利用の観点から, CO2麻酔と殺方式を導入したと殺システムの検討が必要と思われる.